文科省要請

ジュネーブに出向いた代表団のオモニたちと足並みを揃えて、今こそ子どもたちの「学ぶ権利」のために攻勢をかけよう!
大阪10校のウリハッキョ・オモニ会を中心とする「大阪府オモニ連絡会」と「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の代表が国連「子どもの権利委員会・対日本審査」が行われた16〜17日の翌日となる18日、参議院議員会館で文部科学省担当者らと面談し、要請行動を行いました。一行は日本政府に対して、国連の各種人権委員会から出された勧告を真摯に受け止め、高校無償化・就学支援金支給制度の適用など朝鮮学校に通う子どもたちの学ぶ権利を保障することを求めました。
これに先立ち、大阪府オモニ連絡会は昨年12月26日、「大阪府・市補助金裁判」における最高裁の不当判決に対する抗議声明を記者会見の場で発表し、二日後の28日付で、朝鮮学校と子どもたちに対する差別的処遇を改善するよう求める質問状を文科省に提出。この日、その回答を受け取る手はずとなっていました。
書面による回答を避け、口頭によりオモニたちの質問に答えた担当者は、1.日本政府は国連の人権規約や条約を遵守している、2.現在まで様々な取り組みを通して数多くの成果を挙げてきた、3.「高校無償化(就学支援金支給)」制度から朝鮮高級学校を除外した問題は、審査基準に適合すると認めるに至らなかったためであり、差別には当たらない、と従来の見解を繰り返すのみでした。
このような文科省の無機質な「紋切り型」回答に対し、オモニたちの代表らは憤りをぶつけました。
「他の外国人学校に対しては全く適用されない厳しい審査基準が朝鮮学校にだけ設けられた理由は何か?」、「国連から度重なる『勧告』を受けているにも関わらず、なぜ『就学支援金支給制度』からの除外を『差別ではない』と言い張るのか」、「世の中にヘイトスピーチが溢れているのは、国や行政の『上からのヘイト=官製ヘイト』が原因だとの認識はあるのか」、「文科省は朝鮮学校の歴史をどれだけ知っているのか」…
無償化連絡会・大阪を代表して参加した大村和子さんは以下のように感想を述べられました。

 「国際人権規約をはじめとする各種人権条約を批准し、遵守する立場ということは認識し、勧告を受け必要だと考えている。学習指導要領に於いても外国人児童生徒への配慮をし、総合的学習等、個別対応をしっかり行っている。朝鮮学校に対して差別はしていない。しかし、審査基準があるので不指定処分が行われた。」と文科省職員は答弁した。朝鮮学校の現場も、子ども達の様子も間近に見たこともない人達の言葉。日本政府はこれまで朝鮮学校を援助したり、支援したことは一度も無かった。一銭たりとも出したことは無かった。むしろ弾圧してきた。そして今、高校無償化から朝鮮学校のみを除外している。
子ども達は朝鮮学校でアイデンティティーを育み、安心して学校生活を送っている。けれど、政府や自治体が朝鮮学校を差別していることを、子ども達は知っている。「…(略)…朝鮮学校に対しては、差別があると思う。ぼくは、差別をなくしたいと思うけれど、高校授業料無償化制度で、朝鮮高級学校の生徒の授業料は無償にならない。国籍関係なしに外国人学校の生徒も対象の制度なのに。………(略)……… ぼくは、日本の人々が、ぼくたちを差別せずに暮らすことを信じる。また、日本の人とぼくたちが、平和に暮らせるようにしたいと心の中から信じる。だから、ぼくたちは、朝鮮人と日本人がもっと仲良くなるその日まで、いのりながら朝鮮学校で勉強する。」城北朝鮮初級学校の6年生児童の新聞への投書を私は「差別はない」と明言する職員に向け読み上げた。
彼の心を踏みにじって恥じない国、政府に対して憤りを覚えるとともに、私自身も日本人として、これから、彼の思いに応えられるよう日々努力したいと思う。
大村和子


最後に、大阪朝鮮高級学校オモニ会の代表が柴山昌彦文部科学大臣宛の要望書を読み上げ、対応に当たった代理の担当者に手渡しました。代表は、「教育の振興および人材育成を司る文科省が国連の勧告を真摯に受け止め、教育現場に政治や外交問題を持ち込むことなく、日本に暮らすすべての子どもたちの尊厳を平等に守り、朝鮮学校の民族教育権、子どもたちの学ぶ権利を保障するようあらためて求めました。

文科省への要請を行った後、一行は各党の国会議員と面談し、夕方からは朝鮮大学校の学生らが中心となって続けられている文科省前での「金曜行動」に参加しました。この日の「金曜行動」には、朝鮮大学校学生のほか同胞、日本の支援者たち、アメリカから来日したデポー大学の学生ら約80人が参加し、朝鮮高級学校への「無償化」適用を求めるシュプレヒコールをあげました。
「金曜行動」初参加となる大阪オモニ連絡会の一員は「やはり文科省に直接訴えているだけあって、参加者たちの口調は強かった」と刺激を受けながら、「裁判で勝とうが負けようが、私たちが主張する権利は変わらない。それは国連でも認められている、当たり前の権利だ。これからもこんな風に連帯を深めながら、諦めず、訴えつづけていくことが大事」だと力強く語りました。
一行は、文科省要請に次ぎ「金曜行動」を終えた後、東京オモニ連絡会との懇親会を精力的にこなし、慌ただしくも意義深い全日程を終え、帰路に着きました。
大阪朝鮮高級学校オモニ会を代表して参加した高己蓮さんは以下のように感想を述べられました。

2017年以来2度目の文科省要請、議員へのロビーイング、金曜行動に大阪府オモニ連絡会を代表して行って参りました。

2年前と全く同じ行程でしたが、文科省の役人からの回答、国会議員は国会が閉会中ということで不在、朝大生の力強いアピール、歌声、スローガン…2年前と変わらぬ光景でした。私たちの質問に対しての彼らの回答は、マニュアルがあるのかと思うぐらい、17日にスイスジュネーブで行われていた「子どもの権利委員会」対日本審査での文科省の代表と類似していました。

彼らはこう答えました。

「朝鮮学校は、当時の法令にのっとって定められた審査基準に適合すると認められず、無償化の対象にならなかった。

生徒の国籍を理由とした差別には当たらず、今後、法令で定める要件を満たせば対象となる」

今回、私たちの質問には担当者1人が代表で答えられましたが、こういったオモニ達との面談は4度目になるそうです。裁判闘争が始まって、6年の月日が流れました。何度踏みにじられても悔し涙を流しても、いつかはこの人たちも、人である以上、良心があるのならば必ず私たちの思いは届くだろうと信じ、この文科省要請が次につながると信じ、今できることは全てする勢いで東京に乗り込んできました。

しかし、顔色一つ変えず淡々と私たちの質問に答える彼に、私は今の日本に漂う閉塞感、押しつぶされそうな空気感を感じました。

その後、国会議員へのロビーイングを済ませ、「金曜行動」に参加するため、朝大生が待つ文科省前にたどり着くと、先ほど感じた閉塞感、空気感は一気に吹き飛びました。

心が折れ、気が腐りそうになる度に、正気を取り戻し、勇気を与えてくれるのが、文科省前での誰も侵すことのできない朝大生たちの真っ直ぐな眼差しでした。

朝大生たちと一緒に歌を歌いました。感情がこみ上げて目頭が熱くなりました。

私は2年前、2度とこの子達にこんな所で歌は歌わせてはなるものかと誓い大阪に帰りました。

あれから2年経ちましたが、もう一度誓いました。

こんな所で2度と子供たちに歌は歌わせない!

必ず私たちの代で幕引きを図ってみせる!

必ずや勝利を手にするまではオモニ達は絶対に負けへんでと

  • 文部科学省で要請文を読み上げる

328回を数えてなお続く大阪の「火曜日行動」はもちろんのこと、朝鮮大学校の学生たちを中心とした「金曜行動」、そして機会ある毎に国や行政への働きかけを積極的に行うオモニたちの姿は、我々に多くのことを教えてくれます。
たとえ司法が不当な判断を下そうとも、子どもたちの「等しく学ぶ権利」を求める自らの正義を信じ、あくまでも差別に抗う姿からは、日本社会において民族教育と子どもたちが差別に晒され続けている現実を決して風化させてはならない、差別は今も「現在進行形」だとの叫びが聞こえてくるようです。
そして我々に強く問いかけます。
権力による「上からのヘイト」に屈し、無力感に苛まれてはいないか?
「諦念」を「潔さ」にすり替え、人知れず隊列から外れ後ずさりしてはいないか?
はびこるヘイトに慣らされてはいないか?
その憎悪にまみれた侮蔑に毒され、闘いを持続させる根気が蝕まれてはいないか?
子どもたちの姿から、仲間との連帯から、希望を見出そうとする心を手放してはならない。
「繋いだ手を離さない限り、決して負けない。」
誰かが言った言葉が示してくれた通り、共に手を取り闘い続けることの大切さを、オモニたち、学生たちが教えてくれます。

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