第11回口頭弁論

専門家による二つの鑑定意見書を提出

■2015年4月24日。
在日コリアンの民族教育史を振り返る時、もっとも熾烈な闘いの歴史として思い起こされる「阪神教育闘争」の記念日。
67年前のこの日、朝鮮学校を死守せんがためにGHQや政府・警察隊に抗い幾多の尊い命が奪われました。民族教育にかける先達の熱い思いと怨恨の歴史が深く刻まれたこの日、奇しくも今日における「民族教育権を守る闘い」の象徴である高校無償化裁判第11回口頭弁論が行われました。
99人の同胞、朝鮮学校保護者や学校関係者、日本人支援者らが傍聴に駆けつけ91席の202号法廷はこの日も満席となりました。今回、原告側からは第9準備書面と二つの鑑定意見書が証拠として提出され、被告側からは第7準備書面といつかの証拠資料が提出されました。
裁判ではまず原告弁護団から木下裕一弁護士が意見陳述を行いました。
被告側第6準備書面の主張に対する反論となる今回の意見陳述で木下弁護士は、無償化法の適用を受けたければいわゆる「1条校」となればよいとした国の主張、発想自体が暴論であると断じ、日本国民とは異なる文化、風習、歴史を持ち、それらを民族的アイデンティティーとして育む朝鮮学校の存在意義を否定し「1条校」の教育を受けて日本国民に同化すればよいとする差別に他ならないと主張しました。また、本来の「無償化法規程13条」に照らしても適用除外は不当であり、ましてやすべての高校生を対象とし、「教育の機会均等に寄与すること」を第1条に掲げた無償化法の目的から見ても朝鮮高級学校のみを適用校から除外するために断行された「省令改定」は委任の趣旨に反して違法無効であると指摘し陳述を締めくくりました。

そして今回、専門家による二つの鑑定意見書が証拠資料として提出されました。ひとつは「無償化連絡会・大阪」の共同代表でもある大阪産業大学の藤永壮教授が「日本国家による在日朝鮮人の民族教育に対する戦前及び戦後における同化政策の内容」について書き、もうひとつは一橋大学の田中宏名誉教授が「1965年以降の日本政府の朝鮮学校に対する対応と高校無償化からの除外理由が政治的・外交的理由であり、教育における差別であること」について書かれたものです。両意見書ともに歴史資料に基づき学術的に民族教育の存在意義と、一貫して行われてきた日本政府の差別的政策を解き明かした内容です。

陳述後、丹羽雅雄弁護団長が今後の立証計画について再び発言しました。
大阪府下の朝鮮学校に子どもを通わせている全保護者を対象として実施されたアンケート調査票とその集計データ、そしてそれらをもとに書かれた専門家の鑑定意見書を証拠として提出することが確認され、国際人権法に照らして朝鮮学校の存在意義について書かれた専門家による意見書も提出することが確認されました。

閉廷後、大阪弁護士会館において報告会が行われました。
丹羽弁護士の総括と木下弁護士の報告に次ぎ、新たに弁護団に加わった鄭文哲(チョン・ムンチョル)弁護士が紹介されました。
また、今回、鑑定意見書をお書きになられた藤永壮教授が紹介され、意見書に込めた民族教育への思いを語られました。
最後に「無償化連絡会・大阪」から長崎由美子共同代表と大村和子さんが活動報告をし、これから大詰めを迎える裁判闘争に更に強く一丸となって臨むことを呼び掛けました。