MOREフェスタ(祝祭)2019

「子どもたちの学ぶ権利を求めて新たなステージへ!」
3月24日(日)、「クレオ大阪南」で朝鮮学校に学ぶ子どもたちを支援するための新たな試みとして「MOREフェスタ(祝祭)2019」が行われました。
これまで数多くの企画を実現させてきた「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の主催です。
「高校無償化」裁判をはじめとする民族教育権を訴え続けた法廷闘争が大詰めを迎えている現在、新たなアプローチでウリハッキョの意義と現状を広めようと企画された今回のイベントには、講師の中村いるそん氏、シンガーソングライターの川口真由美さんをはじめ多彩な出演者たちが名を連ねました。
開演の午後2時、ホールには420名にものぼる多くの人が詰めかけ、会場は熱気に包まれました。
この日、司会を務めた崔勇貴、高稀暎さんたちのはつらつとした開会宣言で幕を開けたイベントは、中村いるそん氏の講演「歴史にとって、私、私たちとは何なのか」で始まりました。中村さんは、全国5つの地域で闘われている「高校無償化」裁判の経緯を振り返りながら、「1勝6敗ではあるが、この大阪地裁での1勝の持つ意義を今一度かみしめることが大事だ」と語りました。そして、「不当な支配」なるネガティブな印象を固定化するため、朝鮮学校のイメージを貶めるキャンペーンに腐心した国側の無理筋の論理が、いかに法廷で矛盾を露呈したかを明かし、確たる立証もないままそれに追従した司法の堕落を厳しく指摘しました。東京での判決言い渡しの直後、一斉に飛び出してきて前方に立ち並び、傍聴席を睨みつける職員たちの後ろで「速やかな退廷を命ずる!」と壊れたテープレコーダーのように繰り返す裁判長の愚かな姿を思い起こすたびに怒りで体が震えると中村さんは心情を吐露しました。
それは、ヘイトデモの際、むしろ彼らを守る警官隊がカウンターに集まった人々を牽制し威嚇するときに取る行動と同じだと喝破しました。まさに、官も民も、そして司法でさえも根を同じくする差別構造の中にある現状を憂いながらも、前を向こうと聴衆を鼓舞しました。中村さんは、各地での判決で負けが込み、落胆しがちな今だからこそ「夢」を持つことの大切さを知ろうと訴えかけ、大阪地裁での歴史的勝訴判決を受け、報告集会でアピールをした大阪朝高生徒の言葉を引用しました。
「日本が、そして世界が、偏見や差別がなくみんなが平等で、当たり前の人権が守られる世の中になることを願っています。どこの国、どこの民族の一員であっても堂々と生きていける。いろんな人が助け合って生きる。そんな素晴らしい社会が作られることを願い、そのための架け橋の存在になりたい。」
あの日の歓喜、そしてこの言葉に込められた思いに今一度立ち帰ろうと中村さんは熱く語りかけます。
かつて、「夢」を持つことの大切さを説いた師匠を思い起こしながら、「破廉恥な不当判決になど負けてはならない!たとえ覆されても、あの日語られた『夢』、私たちが分かち持ったであろう『夢』に立ち帰ろう!」
そして「あるべき世界、目指すべき世界を思い描き、実現させよう!」と呼びかけました。
中村さんは講演の最後に、「過去は変えられる」と言いました。「過去に起こったことはもちろん変えられない。だけど、私たちが歴史に恥じない選択をすることで、過去の持つ『意味付け』は変えられる。」と。
講演のタイトルが示す通り、過去、幾たびも民族権を守るために先達により闘われてきた尊い歴史に私たち自身が問われている。先人に問われている。さらには人生に問われている。そう説きました。
「法廷で泣きじゃくり、立ち上がれなかった過去も、裁判所から追いやられ、路上にしか居場所がなかった過去も、乳飲み子を抱えて『火曜日行動』で府庁前に立った時、知事に暴言を吐かれた過去も、署名活動をしていた生徒の用紙に「死ね!」と書かれた過去も。事ある毎に暴力にさらされてきた子どもたちや犠牲となった学生、さかのぼって48年49年の出来事(朝鮮学校強制閉鎖令)も、今私たちが歴史に、先人に恥じない選択をする事で過去の『意味付け』は変えることができる。そうやって先人に正義を還す、先に逝った人たちに正義を還すという義務を果たす事で、自らの権利を勝ち取るための闘いで新たなステージに立とう!」
中村さんは、何度も何度も「夢」という言葉を繰り返し、私たちが失いかけていたものを思い起こさせてくれました。そして、奮い立たせてくれました。
会場から大きな拍手が送られました。

  • 若さあふれる二人がフレッシュな司会を務めました。
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休憩をはさんだ第二部、華やかな舞台のトップを飾ったのは和歌山ハッキョオモニたちの「チャンゴナンタ:アリラン」です。軽快な音楽に乗せて華麗な振り付けとともに民族打楽器「チャンゴ」を打ち鳴らすパフォーマンスが観衆を魅了しました。演奏後には今年60周年を迎えた和歌山ハッキョと子どもたちを守り続ける決意を込めたアピール。客席から割れんばかりの拍手が送られました。
次に舞台へと上がったのは大阪朝高オモニ会の役員メンバーたちです。去る1月27日、「ZEPPなんば」で開催された「コリハモ」の二次予選まで勝ち残ったアカペラ「パンダル(半月)」を披露してくれました。歌の前には一人ずつ、思いの詰まったアピールもしました。
オモニたちは「新たなステージへと進んだ闘い」で、「ステージに上がるのは私たちみんなだ」と、「誰も観客なんかじゃない」と訴え、「愛する子どもたちのためならきっとできる!」、「できること全て、やれることを全部やりましょう!!」と力強く呼びかけました。
思いを一つにした参加者たちも大きな拍手でエールを送りました。
続いて、大阪朝高声楽部の三人がみずみずしいハーモニーを聞かせてくれました。披露してくれた2曲とも、民族教育で育まれた生徒たちの思いが込められた歌です。若い感性が力強い歌声に乗せられ、会場を大きな感動で包みました。
次の演目もコーラスでした。声楽に携わった経験を持つ同胞男性たちが舞台を引き締めます。全員が大阪朝高OBである彼らは、先に舞台に上がった声楽部の生徒たちを応援するため、このイベントを機に立ち上げた新生グループです。学生時代から愛唱した「祖国と民族のために」に加え、ダークダックスの名曲「銀色の道」を低音の魅力で歌い上げました。観客席のあちらこちらから一緒に口ずさむ歌声とともに手拍子が沸き起こりました。
また、今回のイベントに際しメンバーの一人が、前述の「コリハモ」に別グループで出演・入賞を果たして得た賞金を朝鮮学校支援活動にカンパしてくれました。
続いては朝鮮舞踊「小太鼓の舞」。大阪朝高舞踊舞踊部のみなさんが一糸乱れぬ華麗な舞を披露してくれました。きらびやかな民族衣装チマチョゴリを翻しながら舞台せましと踊る姿に観客席からはため息が漏れました。
バラエティーに富んだ舞台のラストを飾ったのはシンガーソングライターの川口真由美さんです。
沖縄・辺野古での基地建設反対運動や平和憲法を守るための活動をはじめ、マイノリティーの「生きる権利」を求める数多くのシーンに力強い歌で勇気と希望を添える彼女の姿は、ステージ上でひときわ独特の存在感を放ちます。
この日もパワフルな歌声で会場をひとつにしてくれました。歌の合間のMCで彼女は、朝鮮学校差別の問題も決して許されてはならない問題だと語り、歌の持つ力で共に訴えてゆきたいと心強いエールを送ってくれました。
川口さんが心に響く歌声で、人が生きることの意味、共に生きることの素晴らしさを切々と歌い上げた最後の曲で、サビに合わせて下手と上手から全出演者たちが舞台に登りました。そして、イベントの最後に観客たちと全員で「勝利のその日まで」を合唱しました。336回をにも及ぶ火曜日行動のたびに歌われているこの歌を数百名が合唱する様は壮観で、心をひとつに集めて続く私たちの闘いを象徴するかのようでした。
司会者はエンディングで、子どもたちの笑顔と希望のために運動を新たなるステージに推し進めようと再び呼びかけました。
閉会が告げられ緞帳が下りるまで会場からは大きな拍手が鳴り響き続けました。
昨年末、「大阪府・市補助金裁判」が最高裁で棄却され、3月14日には「高校無償化」裁判で福岡地裁が不当判決を下しました。そんな暗鬱な空気を吹き飛ばし、最後の最後まで勝利を信じて前に進む勇気をすべての参加者たちに与えてくれる素晴らしいイベントとなりました。

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