世界に訴える

2019年1月14日、5人のオモニたちと朝鮮大学校の学生、現職の朝鮮学校教員を合わせた7名の代表たちが「国連朝鮮学校学生・オモニ代表団」としてスイスはジュネーブへと飛び発ちました。
「子どもの権利委員会」対日本審査(1月16~17日)が開かれる国連の場で各国の審査委員たちに、日本での朝鮮学校に対する差別の実態を知らしめ、再び日本政府への勧告が出されるよう働きかけるためです。
全国の朝鮮学校保護者たちを代表して集ったオモニたちにとって、今回のロビー活動は単なるアピール行動ではありませんでした。2010年から依然として続く「高校無償化」法の適用除外、全国に広がる補助金支給停止や減額などの行政差別、挙句ウリハッキョの幼稚班に通う幼子たちまでも除外されたまま10月から始まる「幼児教育無償化」など、国や行政が主導して行われている差別政策が民族教育の運営状況に深刻な悪影響を及ぼしている現状について情報提供を行って明確に示し、国連委員たち自らが日本政府に対して強く示した通り、これらの事象が子どもたちの「等しく学ぶ権利」を著しく侵害している差別であると再度訴え、再び日本政府への「勧告」を引き出すための重要な役割でした。同委員会による対日審査は、1998年、2004年、2010年に次ぎ今回が4回目です。前回から数えて約9年ぶりの開催となりました。
二日間に及ぶ「対日審査」を通じて、あでやかなチマチョゴリに身を包み、審査会場である国連高等弁務官事務所で委員たちに資料提供を積極的に行うなどオモニたちの能動的な働きかけが、国連委員たちの認識に大きな影響を与える成果を収めた反面、日本政府の代表として質問に答えた文部科学省、厚生労働省、法務省の役人たちの態度は依然として無責任極まるものでした。
17日、南アフリカのスケルトン委員からなされた「2013年に社会権規約委員会が『高校無償化』制度を朝鮮学校に通う子どもたちにも拡大することによって教育に関する差別に対処するよう求めているが、他の人権条約委員会からの勧告に対処するため、どのような策が施されたのか」という質問に対し、文科省の代表は「「無償化制度は対象となる生徒を日本国籍に限定していない。日本国内に在住している朝鮮籍を含めた外国籍の生徒も含まれている。支援の内容も日本国籍の生徒と全く同じ内容であり、外国人学校に生徒が通う場合であっても法令に定める要件を満たしていれば支給対象となる。朝鮮学校については当時の法令によって定められた審査基準に適合すると認めるに至らなかったため無償化支給対象の指定にならなかった。あくまで法令に沿って判断したものであって、朝鮮学校に通う生徒たちの国籍によって差別したものではない。今後、朝鮮学校が法令で定める要件を満たせば、支給対象となる」などと、木で鼻をくくったような回答を繰り返すのみでした。
あくまでも事実を無視し、頑なに「差別ではない」と強弁する日本政府の代表団の回答に国連委員たちは懸念を表しました。日本国内メディアの反応も、政府が国連から度重なる「勧告」を受けているにも関わらず低調なものに終わりました。以下に、NHKによる数少ない記事の一つを引用します。

NHK  News Web

授業料無償化の朝鮮学校対象外 日本政府「差別には当たらず」

スイスで行われた子どもの権利委員会で、日本にある朝鮮学校が高校の授業料を実質的に無償化する制度の対象外とされていることについて、委員から質問があり、日本政府は、法令にのっとって判断したものであり、差別には当たらないと説明しました。

国連総会で採択された「子どもの権利条約」に基づいて設置されている権利委員会は、条約を批准している国の人権状況を調べる委員会をジュネーブで開き、16日から2日間にわたって日本について審査しました。

この中で委員の1人が、日本にある朝鮮学校が高校の授業料を実質的に無償化する制度の対象外とされていることについて「問題解決を求める声は国連の委員会でも上がっているが、何らかの対策をとっているのか」と質問しました。

これに対し、文部科学省の担当者は「朝鮮学校は、当時の法令にのっとって定められた審査基準に適合すると認められず、無償化の対象にならなかった。生徒の国籍を理由とした差別には当たらず、今後、法令で定める要件を満たせば対象となる」と説明していました。

文部科学省によりますと、制度が始まってからこれまでに、外国人学校42校を実質無償化の対象として認めた一方、朝鮮学校10校は対象外としていて、元生徒たちが国を訴える裁判も起きています。

会場には、子どもが朝鮮学校に通う保護者なども傍聴に訪れ、熱心に聴いていました。委員会では今回の審査を踏まえて、来月上旬に日本への勧告を行うことになっています。

それでも、世界が注目する国際会議の場で、日本政府の差別的政策の実態や国連勧告に対する不誠実な態度を暴き出したことの意味は決して小さくないでしょう。日本政府に対する「子どもの権利委員会」の総括所見は、現在進行中の会期終了後、2月7日頃発表されることとなります。
大阪では、来たる2月15日、「東成区民センター」大ホールにて、代表団による国連活動の報告会が開催される予定です。
ぜひとも会場に足を運び、民族教育が晒されている差別の現実と、日本へと注がれている国際社会の厳しい目を学び、感じてください。

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