大阪「高校無償化」裁判 判決報告集会

2017年7月28日   於 東成区民センター

●歴史的勝訴判決の興奮と感動冷めやらぬ7月28日午後6時半、東成区民センター大ホールにて大阪「高校無償化」裁判 判決報告集会が行われました。 会場を埋め尽くした700名にものぼる参加者たちは、みな司法により民族教育権が認められた嬉しさと、ウリハッキョを守る闘いに勝利した誇りに満ちあふれていました。

●集会は、「無償化連絡会・大阪」長崎由美子事務局長の高らかな勝利宣言で幕を開けました。そして「高校無償化」をめぐる問題で最も傷つき、苦しみながらも耐え続け、今日の勝訴判決をこの上ない喜びで迎えた大阪朝鮮高級学校の生徒たちが、民族の歌と踊りを披露し集会に花を添えました。

●集会ではまず「裁判・判決報告」がありました。金英哲弁護士は報告の中で、学園側の主張が全て認められた画期的な判決であること、国は控訴するだろうが、さらに判決文を精査し、弁護団も全力で頑張っていくと述べました。

●次に、大阪朝鮮学園の玄英昭理事長が、声明文を読み上げました。玄理事長は今回の勝訴判決を、皆で勝ち取った勝利だと評価しつつ、今後も力を合わせて闘い抜こうと力強く訴えました。

●アピールが行われました。大阪朝高オモニ会の高吉美会長は3年前の集会で朝高の生徒が、無償化は恩恵でなく、権利であり、この闘いには正義と希望、未来があると力強く発言したことをあげ子どもたちの笑顔と明るい未来のためにこれからも闘い抜くと決意を語りました。

●続いて東京、愛知、広島、福岡から応援に駆けつけた方々が次々と登壇しました。アピールでは皆一様に、今日の勝訴が大阪のたゆまぬ努力と団結によってもたらされたものだと讃え、自分たちも大阪の後に続くと宣言しました。

●大阪朝高2年生の女子生徒がチマ・チョゴリを着て登壇しました。「なぜ私たちはチマチョゴリを着て通学できないのか」と、日本社会の差別構造を批判し、「この判決は私たちの存在を認めてくれた。これからは堂々と生きていける。今度は自分たちが後輩たちを守り、差別がなく、人権が奪われない社会を目指してこれから生きていきたい」とのべました。

●韓国から駆けつけた「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」代表は、64団体の共同声明を読み上げ、「民族教育の権利のために、共に生きる日本社会のために、未来の東アジアの平和のために、祖国の統一のために共に闘い抜きましょう」と心強いエールを送りました。

●最後に、伊地知紀子共同代表(大阪市大教授)が声明文を読み上げ、日本政府の速やかな「高校無償化」制度適用と、大阪府・市の補助金支給再開を強く求めました。 そして、丹羽雅雄弁護団長をはじめとする弁護団のメンバーたちが舞台に上がりました。裁判を勝利へと導いた彼らを讃える大きな拍手が会場を包む中、喜びの感想を語りながら弁護士たちは、今後の法廷闘争について勝利への意気込みを力強く語りました。

弁護団の金英哲弁護士「無償化連絡会News」に寄稿した文を以下に掲載します。

無償化裁判勝訴判決について
弁護士 金英哲

2017年7月28日、大阪地方裁判所において画期的な判決が下された。行政訴訟で国が負けることはほとんどないことに加え、広島地裁の敗訴判決もあって重苦しい空気に包まれていたが、このような状況を一変させる歴史的な原告勝訴判決となった。
原告の大阪朝鮮学園が裁判で求めていた結論(請求の趣旨)は、主に次の2つである。①文部科学大臣が大阪朝鮮高級学校を就学支援金支給対象校として指定ないとした決定(処分)を取り消す、②文部科学大臣は大阪朝鮮高級学校を就学支援金支給対象校として指定せよ(指定の義務付け)というものであったが、判決では、これらが全面的に認められた。
原告が勝訴したポイントを要約すると、次の2点となる。
一つは、省令の削除を無効とした点である。不指定とするに伴い、拉致問題等を理由に、指定の根拠となる省令を文部科学大臣が削除したことについて、高校無償化法が目的とする「教育の機会均等」とは無関係な外交的・政治的判断によるもので、法律で与えられた権限外の行為だとして違法・無効とした。
もう一つは、大阪朝鮮高級学校が審査基準を満たすという点である。問題となった基準は、①就学支援金が生徒の授業料として確実に使われること、②法を守った学校運営がなされること、というものである。大阪朝鮮学園は、法律を守って財産資料を作っており、理事会も開いている、大阪府の立ち入り検査によっても法律違反の指摘はされていない。これらのことから、特別な事情がない限り基準を満たす。被告が提出した産経新聞の記事等は特別な事情にあたらず、不指定処分は違法で、指定されるべきと判断された。
今回の判決は、当然のことを認めたに過ぎないが、社会に与えたインパクトは強烈であり、先例としての価値も高い。各地の弁護団や支援者と連携しながら有効に活用していくことで、控訴審はもちろん、補助金訴訟や各地の無償化訴訟での更なる勝利に繋げていきたい。