全国一斉行動・全国集会

 

◆ 2016年2月13日(土)、大淀コミュニティーセンターに於いて「〜 こどもたちの笑顔と希望のために 〜 朝鮮学校高校無償化全国一斉行動全国集会」が行われました。
◆ 昨年の同時期、第1回目として東京で催されたこの集会には、日本各地の「朝鮮学校高校無償化」支援団体のメンバーと朝鮮学校関係者、生徒、保護者をはじめとする同胞、日本人たち約420人が参加しました。
◆ 今回の全国集会は、朝鮮学校の処遇改善を求めるため文科省が省令を改悪し朝鮮学校を「無償化」制度から除外した「屈辱の日」である2月20日の時期に合わせて開催されたものです。
◆ 今後、各地でも同じ趣旨の集会や街頭宣伝など様々な形で「一斉行動」が行われる予定です。


自尊心を育みながら生きて行ける場所が要る

集会は「無償化連絡会・大阪」の共同代表、韓哲秀さんの挨拶から始まりました。韓さんは、日を追う毎に日本社会で広がるマイノリティーへの無理解や偏見、差別の中、朝鮮人としての自尊心を育みながら生きて行く事がますます困難になっていると言いました。そして、唯一それを可能にしてくれる朝鮮学校という存在が、世界的にも貴重な在日コミュニティのベースにもなっているとしながらも、現在、高校無償化除外や補助金不支給問題などで窮地に立たされていると指摘しました。それでも民族教育を守り、受け継いで来られたのはひとえに「無償化連絡会・大阪」の様な「結束したちから」があったからだとしつつ、植民地主義が徹底して嫌い断ち切ろうとする「連帯」の輪を一層広げ朝鮮学校を守るための裁判に必ず勝とうと訴えました。

声高らかに「MORE(モア)」を合唱

昨年度、無償化連絡会・大阪は、朝鮮学校の子どもたちを勇気づけるための「朝鮮学校応援ソング」を作りました。大阪府内10校の朝鮮学校児童・生徒たちから募った詩を元に出来上がった曲名は「MORE(モア)」。英語の発音では「もっと、よりたくさん」といった意味になり、朝鮮語の発音では「集める」という意味になります。作曲を手がけ歌を完成させた大阪朝鮮高級学校教育会・趙邦佑(チョウ バンウ)会長が、この日、自ら歌唱指導をしました。「♪踏み出す勇気を MORE〜 足並み揃えて MORE〜 共に駆け抜けよう〜 明るい明日に向かって〜…」会場を埋めた参加者たちは、手に手を取って朝鮮学校の子どもたちを応援する歌の内容と同様、テンポの良い曲調に合わせて元気に力強く歌いました。

大阪で争われている訴訟の本質的課題

全国5箇所で争われている「無償化裁判」。この日の集会ではそれぞれが辿った裁判までの経緯と現状、今後の争点と課題が報告されました。また、裁判闘争を支える多様な活動についても報告されました。まずは大阪弁護団からの報告です。丹羽雅雄弁護団長は全国的な法廷闘争を相対的に説明しながら大阪の裁判内容について詳細を報告されました。まず、「高校無償化法」がどんな目的を持っていかなる背景で成立したのか、そして朝鮮高校のみがなぜ除外されたのか、原告・被告、互いの主張と争点について解説されました。そしてこの裁判の本質的課題が政権と、それに呼応する地方自治体による「上と下からの政治介入」、「同化と排除」、「民族差別」に抗して民族教育権を守り抜く戦い、共生社会実現のため「連帯とつながり」を創り出す戦いだとして、裁判勝利に向けて更に前進しようと訴えました。

大阪府知事・差別発言抗議申入れの報告

続いて「無償化連絡会・大阪」の長崎由美子事務局長が、去る1月18日に行われた大阪府・松井一郎知事に対する「抗議申し入れ」について報告しました。これは今年最初の「火曜日行動」が行われた去る1月5日に起こった極めて悪質な差別事象に対して同連絡会が正式な文書で大阪府に対し抗議したものです。1才のわが子を抱き寒空の下「火曜日行動」に参加した同胞女性が、チラシを受け取らずに無視して通り過ぎようとする松井知事の背中に向かって「この子に学ぶ権利はないのですか?」とぶつけた問い掛けに対し、背を向けたまま「ない!」と吐き捨てた知事の民族教育を否定した差別発言は決して許されるものではありません。壇上の長崎さんは声を震わせながら「抗議申し入れ」当日の様子を報告されました。長崎さんは、大阪府の極めて事務的で不誠実な対応を厳しく指摘して、首長自らが朝鮮学校差別の先頭に立つ排他的な現状を決して諦観せず徹底的に追求して行こうと訴えました。

福岡の裁判、支援活動報告

次に福岡弁護団から朴憲浩弁護士が登壇しました。福岡では朝鮮学校関係者、弁護士、そして以前から組織されていた「朝鮮学校を支援する会」が中心となって2013年9月28日に結成された「朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会」が無償化裁判や朝鮮学校に対する支援の主体となって活動しています。その内容に触れながら朴弁護士は、2013年12月19日の提訴以来これまで7回に渡って行われてきた口頭弁論の経緯や内容について報告しました。また、来る3月10日に行われる第8回口頭弁論では、朝鮮学校の教育施設や授業風景などを裁判官に現地に来て直接見てもらうための「検証申出」をする予定だと発言しました。そして、九州全域を網羅し、労働組合、支援団体、市民団体の支援を受け傍聴行動や財政支援活動などが活発に行われている現状についても報告されました。それら一連の活動が会報の「ミレ通信」を通じて広く宣伝されている事もあわせて報告されました。

広島の裁判、支援活動報告

広島からは広島朝鮮学園の金英雄理事長が報告されました。全国的に進行状況が進んでいる広島の裁判について金理事長は「どんどん進めて早く結審したい」と述べました。また、広島も大阪同様「無償化除外」を機に、県と市からの補助金が凍結された現状について触れ、とりわけ既に予算化されていたものさえも「執行停止」された厳しい現状を打破すべく、県と市に対して行われた様々な取り組みについて報告されました。一昨年「モンダンヨンピルコンサート」の際に来日したクォン・ヘヒョ氏を伴い県知事を表敬訪問して朝鮮学校支援の確約を取り付けた事例や、広島市との交渉過程で「県の補完」に過ぎなかった補助金事業のシステム自体を変えるための働きかけがなされ、昨年6月に広島市が「地域交流費」を計上・可決した事などが報告されました。また「第1回へいわ こども展」で、朝鮮学校と日本学校生徒の美術作品を展示し、相互交流を図った取り組みについても紹介されました。

愛知の裁判、支援活動報告

愛知からは「無償化ネット愛知」の共同代表、原科浩さんが報告されました。大阪と共に全国に先駆け「高校無償化裁判」を起こした愛知の特徴は、原告10名の愛知朝鮮高級学校生徒全員が意見陳述を行ったことだとしながら、裁判のはじめから主に民族教育の歴史と現状を裁判官に正しく理解してもらうための主張に注力してきたと報告しました。そして現在は口頭弁論も回を重ね、「国際人権法」に照らした法律論に移っているとしながら、傍聴を呼び掛けるチラシの作成配布とSNSの活用が功を奏し、毎回150名を超える傍聴希望者が集まっていると報告しました。そして、裁判支援通信「トトリ通信」の定期発行、Tシャツやエコバッグ、缶バッヂなど多彩な裁判支援グッズの販売なども盛況で、月1回の「無償化DAY」には裁判支援に関わるイベントも幅広く開催されていると紹介されました。

東京の裁判、支援活動報告

報告の最後は「東京朝鮮高校生の裁判を支援する会」の森本孝子さんでした。森本さんは先ず第8回まで進んだ裁判について報告しました。東京では約100名を収容できる大法廷の傍聴抽選に毎回200〜300名が並びます。そして毎回抽選にもれた人たちを集めて裁判後に参議院の講堂で「報告集会」を行っています。これが議員らに対する強いアピールとなるばかりか、裁判所から会館までの移動も、のぼりやプラカードを持った「サイレントデモ」となって有効な示威活動になっていると報告しました。また、創部以来初となる東京朝高ラグビー部の全国大会出場を紹介しつつ、都の代表である選手たちが「無償化」からも補助金からも除外されている矛盾を指摘しました。そして、補助金支給停止の根拠となった調査報告書が差別的な内容に満ち、ヘイトスピーチを助長する悪しき要因となっている現状について「抗議申し入れ」を行った事と、毎週金曜日に文科省前で行われている「金曜行動」についても報告されました。

大阪・朝鮮学校の現状を映像化したDVDの上映

報告の後、去る1月21日の補助金裁判第17回口頭弁論の法廷に於いて原告・大阪朝鮮学園の証拠として視聴された「ウリハッキョ 〜朝鮮学校に学ぶ子どもたち〜」が上映されました。これは、原告が裁判官にこの裁判の本質を正しく理解して公正な審理をしてもらおうと再三に渡り申請していた朝鮮学校への「実地検分」が却下されたのを受け、朝鮮学校に学ぶ子どもたちの実状を直接見て判断してもらおうと作成されたDVD映像です。14分にまとめられた映像には大阪府内10校の朝鮮学校に通う子どもたちの日常が収められていました。朝鮮学校を取り巻く厳しい社会状況の中にあっても、のびのびと民族的アイデンティティーを育み、確かな希望を持って学校生活を送っている子どもたちの姿は、裁判の当日同様、集会参加者たちに朝鮮学校のみを標的とした差別政策の不当性と、子どもたちの「学ぶ権利」を守る重要性を再び強く訴えかけました。

青春アピールNo.1 京都朝高の在学生

現在朝鮮高級学校に通っている在学生たちが登壇しました。先ずはじめにアピールしたのは京都朝鮮高級学校2年生代表です。彼はたくさんの先輩たちが一生懸命に活動してきたが、高校無償化の対象に適用されることなく卒業していった中、いつも自分たちを見守り、支えてくれた「コッポンオリ」(支援者団体)の粘り強い活動が元気と勇気、ちからを与えてくれると言いました。また、自分たちも心温かい支援者たちと一緒に街頭に立って差別是正を訴え続けていると報告しました。そして、次は自分たちが後輩たちのため、日本社会と在日社会の真の未来のため、平等な「学ぶ権利」を勝ち取るため、力強く戦って行くと決意を表しました。

青春アピールNo.2 神戸朝高の在学生

続いて神戸朝鮮高級学校の3年生代表が登壇しました。在日朝鮮人のアイデンティティーや民族の誇りを教えてくれる民族教育を自身の手で守り抜くため、朝鮮大学校に進学し、朝鮮学校の教師になる事を志しているという彼は、これまで自分に日本の地でも朝鮮人として堂々と生きて行くために一番大切な民族の心を培ってくれたのは紛れもなく朝鮮学校だったとして、これからは自分が「教える側」の立場になって育ち行く次の世代に民族教育を受け継いで行くと言いました。そして、進学後も毎週、文科省前で行われている「金曜行動」に欠かさず参加すると共に勉学にも励んでウリハッキョの教師となる準備をしっかりすると決意を表しました。

青春アピールNo.3 大阪朝高の在学生

最後に大阪朝鮮高級学校2年生代表の生徒が発言しました。高校無償化から自分たちだけが除外され、様々な矛盾や葛藤、怒りや悲しみを胸に、5年間の日々を送ってきたと言う彼は、自分たちの歴史やルーツについて深く広く学ぶ中で、過去と向き合い在日同胞社会を継承する覚悟が芽生えたと言いました。それはひとえに在日朝鮮人として希望を持って生きる事、言わば「心の軸」を朝鮮学校が教えてくれたからだと言いました。彼は厳しい社会状況の中、それでも裁判闘争や支援活動などウリハッキョのために尽力して下さる人々から力と勇気を与えてもらいながら、最後まで差別や弾圧と戦い、朝鮮人として堂々と学んで行くと誓いました。

韓国からの連帯あいさつ

学生たちのアピールに続いて、「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のソン・ミフィ共同代表が連帯のあいさつをしました。ソン氏は昨年11月12日に北区民センターで行われた「朝鮮学校を守るための裁判支援集会・大阪」に継ぎ、今回も朝鮮学校の子どもたちと保護者、関係者、支援者たちに温かいエールを送ってくれました。あいさつの中でソン氏は、日本軍による「慰安婦」問題について日本政府が公式な謝罪と賠償をすることのみが、唯一、被害者のハルモニたちの人権と名誉を回復する道だと訴え、同時に朝鮮学校に対する弾圧と同胞たちへの差別を一刻も早く是正せよと訴えました。とりわけ、日朝間で進展のない外交問題を口実に、何ら関係のない子どもたちを差別し、迫害し、「高校無償化」制度から除外している政府の施策は「犯罪」だと断じました。さらには、在日同胞たちが地域社会に暮らしながら全ての納税義務を立派に果たしているにも関わらず差別を受けることは絶対にあってはならないと指摘しました。そして、国連の社会権規約委員会の勧告通り、朝鮮学校生徒たちへの高校無償化適用を強く求め、権利を勝ち取るまで決してあきらめず、最後まで共に頑張ると言いました。氏は韓国でも「〜市民の会」の結成以降2年の間、「金曜行動」をはじめとする様々な行動やキャンペーンを行ってきたと報告しながら、これからも互いにかたく手を握りあい、最後まで戦い抜こうと力強く訴えました。

朝鮮学校応援ソングの合唱

集会冒頭で習った「朝鮮学校応援ソング・MORE(モア)」を参加者全員で合唱しました。舞台には大阪朝鮮高級学校オモニ会の皆さんが上がり合唱を力強くリードしてくれました。元気な歌声と共に、集会終盤に向けて会場の雰囲気は大いに盛り上がりました。

集会の決議案を採択

「無償化連絡会・大阪」の大村和子さんが今集会の「決議案」を朗読しました。大村さんは、朗読に先立ち「かたく握りあった手を離さなければ必ず勝ちます」と言った韓国・ソン・ミフィ代表の連帯挨拶を引用しながら今一度、結束を呼び掛けました。そして、全国の朝鮮学校生徒、関係者、保護者、支援者たちの思いを込めて集会決議案を朗読しました。「決議文」は満場の拍手をもって採択されました。

大阪朝鮮高級学校・学校長が閉会のあいさつ

集会の最後に、大阪朝鮮高級学校の金允善校長が閉会のあいさつをしました。金校長は今回の集会を、全国各地における運動の成果を共有し、それを一層高める上で大きな契機になるとても有意義な場であったと総括し、各地の実践報告や力強いアピールを通して、昨年度開かれた東京での全国集会以降、裁判闘争を始め、取り組みが様々な形でより深まってきたことを実感することが出来たと述べました。また、今集会を通じて今後の取り組みをより力強く推し進める上で重要な、われわれ皆の思いを再確認することが出来たとしながら三つのことを訴えました。まず、何よりも子どもたちの基本的な人権、とりわけ民族教育権をはじめとする子どもたちの「学びの権利」を侵害するいかなる動きも決して許さないという覚悟と、「子どもたちに笑顔と希望を!」と言う私たちの熱い思いを再確認したことだと言いました。また、この問題を政治利用する危険な動きを厳しく見つめ、それを絶対に許してはならないと訴えました。そして、大阪の訴訟で提出された専門家の鑑定意見書を引用しつつ在日朝鮮人の民族教育に対する政府の態度を在日朝鮮人社会を抹殺する同化政策だと指摘しました。最後に金校長は、これまでの成果を踏まえ、今後の戦いを勝利へと進める原動力は弁護団、支援者、我々当事者の団結したちからに他ならないとしながら、各地において一層力強く取り組みを展開することを共に決意しようと訴え、あいさつを結びました。