控訴審第2回口頭弁論

2018年、最初の裁判期日は2月14日(木)の「高校無償化」裁判控訴審第二回口頭弁論でした。
昨年12月14日の控訴審第一回口頭弁論からちょうど2ヶ月が経ちました。民族教育権が大きく認められ、国による「高校無償化」制度除外の違法性が厳しく糾された先の地裁判決が支持され結審することが期待された今回も134名に登る傍聴希望者が裁判所に詰めかけました。今年から全ての入館者に対し、金属探知機による「所持品検査」が義務付けられ、裁判所はこれまでと違い物々しい雰囲気に包まれていました。朝鮮学園関係者と学校保護者、卒業生たちや活動家、日本人支援者たちは午後2時からわずか10分間の「傍聴抽選券」配布に合わせ裁判所本館の正面玄関前に集まりました。この日、大阪朝鮮高級学校から15名の3年生たちが参加しました。女子9名はチマチョゴリの制服姿です。朝鮮学校で民族的アイデンティティーを学び育んでいる自分たちの真の姿を見てもらい、知ってもらいたい。その上で差別や偏見なく審理してほしいとの願いが伝わってきます。生徒たちは緊張した真剣な面持ちで法廷に入りました。
午後3時、裁判が始まりました。裁判長はまず書面の確認をしました。控訴人側からは2月14日付で「第1準備書面」が、被控訴人側からは2月9日付で「準備書面」がそれぞれ提出されました。続いて裁判長は、今後の裁判進行について意見を求めました。控訴人側の弁護士は、裁判そのものを引き延ばしたい意図から次回期日を設けることが望みでしょうが、明確に示す主張も証拠ももはやありません。裁判長の問いかけに対し「特にありません。」としか答えられませんでした。被控訴人側からは丹羽雅雄弁護団長がきっぱりと「速やかな」結審を求めました。ところが、裁判長は自ら「裁判所から控訴人と被控訴人に提起する形で」と次回期日について持ちかけました。
曰く「規定13条の適合性、その判断に当たって文部科学大臣の裁量があるのか、ないのか。特に教育基本法16条に関わるところの『不当な支配』、その点について裁量の有無、裁量があるとすればその範囲についての議論。意見に補充するところがあれば提出してほしい。」として双方の主張を求めました。しかし、これらの問題点については、一審において尽くされた議論であるばかりでなく、判決文によって明確に判断が下されたはずです。意図的に結審を避け、裁判を引き延ばそうとしているかのようです。裁判長の提案を歓迎する国側と、速やかな結審を望む学園側の意向は対立しました。そこで裁判長は合議を告げ、裁判官たち3人が退席しました。およそ5分間、場所を移して合議が行われたのち再び法廷に戻った裁判長は、前述の問題をさらに深く審議するため、次回期日を設けると宣言しました。これを受け丹羽弁護団長は、「主張に対する反論」への「再反論」が出され、不毛なやり取りで徒らに裁判を長引かせることのないよう、書面の提出期限を早めに設定するなど対策を講じるよう裁判所に促しました。裁判長は、主張をまとめ書面として提出するのに必要な期間などを勘案し、次回期日を4月27日にすると決めて裁判の終了を告げました。
閉廷後、弁護士会館の2階で報告会が行われました。報告会ではまず丹羽雅雄弁護団長が、結審せず不本意な結果となった今回の裁判を振り返り総括しました。丹羽弁護団長は「無償化」制度からの除外を是が非でも正当化しようとする国の態度を指摘し、歴史的勝利を収めた地裁判決を高裁で維持することの難しさ、この裁判闘争を勝ちきることの厳しさを語りました。それでも丹羽弁護団長は、改めてこの裁判が持つ意義を確認しました。この法廷で裁かれるのは朝鮮学校の教育内容や本国、総聯組織との関係性などではない。ましてや朝鮮学校に学ぶ子どもたちのふるまいなどでは決してない。裁かれるのはこの社会の在り方、日本の民主主義だ。だからこそ我々日本人も当事者と言える。最後の最後まで共に闘い抜こうと力強く語りかけました。
そして、この「高校無償化」裁判と、「大阪府・市補助金裁判」に携わる弁護団のメンバーたちが紹介され、ひと言ずつ発言しました。
弁護士たちは、この日の裁判に対する感想を述べるとともに完全勝訴への決意を表明しました。また、玄英昭理事長が最後に発言し、弁護団に寄せる全幅の信頼が勝訴への信念へとつながっている、子どもたちの「学ぶ権利」を守るため最後まで闘い抜くと力強く訴えました。
続いて、今回の裁判が2月14日に行われたことにちなんで大阪朝鮮高級学校オモニ会の役員たちが、弁護団の先生方に「バレンタイン・チョコ」を手渡しました。
最後に、無償化連絡会・大阪の長崎由美子事務局長が今後の活動予定を伝え、闘い続ける弁護団を引き続き支えて行こうと訴えかけました。
次回、第三階口頭弁論は4月27日(金)、午後3時からです。