第12回口頭弁論

朝鮮学校保護者らのアンケート調査結果と鑑定意見書を提出

■去る7月15日、「高校無償化裁判・第12回口頭弁論」が行われました。連日、うだるような暑さが続く酷暑にも関わらず、当日は106名の朝鮮学校関係者や保護者、同胞、日本の支援者らが傍聴に訪れました。
折しも同日、衆議院では「安全保障関連法案」が自民、公明党により強行採決され、国会前に集結した市民らの反対運動が最高潮に達しました。同じ安倍政権が「戦争が出来る国作り」と共に率先して押し進めてきた「弱者切り捨て」政策、「排外主義」政策の象徴こそが「高校無償化法」からの朝鮮高級学校除外です。施行から既に5年以上が経過してもなお差別的政策を改めようとしない政府に対し保護者や同胞、支援者らは強い怒りを持ってこの日も裁判に臨みました。
12回目となる今回の口頭弁論では、被告である国側の主張に対する反論のほか、原告・大阪朝鮮学園側から第10準備書面の提出が確認され、三好吉安弁護士が要旨陳述を行いました。今回法廷に提出したものは藤永壮教授、田中宏名誉教授及び伊地知紀子教授の3名の学者の鑑定意見書です。三好弁護士はその内容を引用しつつ、原告の主張に理由があることを力強く、丁寧に訴えました。

伊地知教授の意見書は、大阪府内に全10校ある朝鮮学校へ子どもを就学させている保護者を対象として実施したアンケート等を踏まえ、保護者の世帯状況や就労状況、朝鮮学校や教育に対する意識等を調査した分析結果です。
三好弁護士は要旨陳述の中で「この鑑定意見書からまずわかるのは、朝鮮学校の保護者の属性が、過去とは異なり、多様化している事実です。日本で出生し、日本で一生を送る世代が大部分を占め、国籍が多様化し、日本学校の経験者も一定割合存在しているということだ。」と、指摘しました。また、「このように多様化した保護者が、朝鮮学校が無償化制度から除外されてもなお、朝鮮学校を選択しているのは、ひとえに、自分の存在のルーツを確認し、これにかかる歴史や文化、そして言語の承継に重きをおいているからであって、朝鮮学校の教育でもそのことが実践されている。」と、朝鮮学校の教育内容が民族的アイデンティティーを育む上で大変重要な役割を果たしている事実を指摘しました。そして、「保護者たちは、無償化制度からの朝鮮学校の除外により、他の学校にはない経済的負担を強いられ、場合によっては奨学金も利用しなければならない状況に苦悩し、なぜ他の学校の保護者と同じように税金を支払っているのに、このように差別されるのかとの疑問を呈している。」と保護者らの厳しい財政状況についても述べました。

今回提出されたアンケートの自由回答欄でも、差別であるとの意見が圧倒的多数を占め、政治と教育は別であるとの意見も多く、中には、無償化制度からの除外は、元々、在日朝鮮人が日本に存在している背景に負の歴史があるのに、在日朝鮮人や、朝鮮学校を差別してもよいとの意識を、公的に、一般市民に植え付けるものだという意見もありました。三好弁護士は「小括」として、「保護者たちは納税義務を果たしているにも関わらず、高校無償化適用除外等の事態によって、多大な負担を強いられており、ひいては、その子どもたちの教育を受ける権利が侵害されていると言わざるを得ない状況にある。」と指摘し要旨陳述を締めくくりました。

閉廷後、いつものように大阪弁護士会館前にて報告会が行われました。
先ずは丹羽弁護団長が今裁判の流れをなぞりつつ、今後の展望について説明されました。続いて要旨陳述を行った三好弁護士から報告があり、鑑定意見書を書かれた伊地知紀子教授が紹介されました。伊地知教授は、鑑定意見書執筆に先立ち、すべてのアンケート内容を読み、分析する過程で、わが子を朝鮮学校に通わせている保護者らの熱い思いに何度も胸を打たれたと感想を述べられました。そして、政府の差別政策によって直接被害を被っている保護者らの「声」をすべて拾い上げて意見書に反映させることが出来なかった事を残念だとしながら、今後も裁判の行方を厳しく見守りつつ朝鮮学校を支える活動に力を尽くしたいと仰いました。

その後、今裁判を傍聴した大阪福島朝鮮初級学校6年生の児童9名と引率の教員らが紹介されました。そして、子どもたちが朝鮮学校のために闘っている弁護士の先生方を激励するために手作りした「千羽鶴」を、同校卒業生である弁護団の金英哲弁護士に手渡しました。金弁護士は送られた千羽鶴を手に、傍聴席で真剣な眼差しを送る子どもたちの姿に勇気をもらったと感謝の挨拶を述べながら、ウリハッキョを守るために最後まで全力で闘うと誓われました。

最後に、無償化連絡会・大阪の長崎由美子さんと大村和子さんが、大詰めを迎えた裁判闘争を引き続き力強くサポートして行こうと訴え、来る11月12日に北区民センターで、裁判報告集会を行うことをお知らせしました。