高校無償化裁判

■2010年4月1日、教育の機会均等を目的とした「高校無償化」法が施行されました。すべての高校生たちに「等しく学ぶ権利」が認められ無償化適用の恩恵が様々な外国人学校にも行き渡っている間、朝鮮学校のみが対象として認められない状態が続きました。そんな中文部科学省は2013年2月20日、朝鮮学校を「高校無償化」の対象から除外する省令を公布・施行し、これまでに申請を行っていた朝鮮学校10校に対し、無償化の対象に指定しないことを通知しました。
同省は2012年12月28日、下村文科相が除外の方針を発表したあと、およそ二ヶ月の間パブリックコメント(「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」の一部を改正する省令案)を募集しました。結果は、30,510件の意見が寄せられ、賛成する内容のものが15,846件、反対する内容のものが14,164件、その他500件だったと下村博文・文科相が2月19日の記者会見で語っています。
下村文科相は「朝鮮学校が日本の学校教育法に基づいた学校に変えれば無償化の対象になる」とコメントしました。

大阪朝鮮学園は2013年1月24日、大阪朝鮮高級学校を高校無償化制度の対象としないのは違法だとして、国を相手に無償化申請に対する不作為の違法確認と無償化の義務付けを求める訴訟を大阪地裁に起こしました。

朝鮮高校「無償化」排除の経緯

2010年
2月21日:中井洽拉致担当相が、川端達夫文科相に朝鮮高校の除外を要請していたことが判明。
2月25日:「高校無償化」法案が衆院本会議で審議入り。鳩山由紀夫首相、「国交ある国を優先」「指導内容見えぬ」と朝鮮高校除外を示唆。
3月16日:国連・人種差別撤廃委員会が対日審査報告を発表し、「子供の教育に差別的な影響を与える」と「無償化」除外に懸念表明。
4月 1日:「高校無償化」法が施行。
4月30日:文科省告示、31校の外国人学校を指定。朝鮮学校の扱いについては5月に検討会議を発足させ、検討することに。
6月12日:国連・「子どもの権利委員会」が総括所見発表。民族的マイノリティに属する子どもへの差別解消を促す。
7月27日:全国の朝高生が11万7722筆の署名を文科省に提出。
8月31日:文科省、検討会議の報告を発表。「教育内容は基準としない」、「外交上の配慮によって判断するのではなく、教育上の観点から判断すべき」などとする。
11月24日:延坪島砲撃事件(23日)を受け、菅首相、審査手続きの停止を指示。

2011年
8月29日:菅首相、手続き再開を指示。
8月30日:ホライゾンジャパンインターナショナルを対象校に指定(7月初旬から審査)。
11月末 :全国の朝鮮学校の現地調査が終了。
12月2日:コリア国際学園を対象校に指定(7月初旬から審査)。

2012年
9月20日:大阪朝鮮学園、大阪府と市に対し2011年度補助金不支給とした行政処分取り消しと交付の義務付けを求め提訴。

2013年
1月24日:大阪朝鮮学園、「無償化」法に基づく指定の「義務付け訴訟」。愛知朝高生は国家賠償請求訴訟。
2月20日:第2次安倍内閣、朝高を排除するため省令改悪。各朝高に「無償化」適用しないことを通知。
5月17日:国連・社会権規約委員会が対日勧告。「無償化」除外は差別にあたると懸念を表明、適用を求める。
8月 1日:広島朝鮮学園、広島朝高生・卒業生、「無償化」法に基づく指定の「義務付け訴訟」、国賠訴訟。
12月19日:九州朝高生・卒業生、国賠訴訟。

2014年
2月17日:東京朝高生、国賠訴訟。
8月29日:国連・人種差別撤廃委員会、「無償化」差別・補助金是正を日本政府に勧告。