1月29日付の「神奈川新聞」に、神奈川朝鮮中高級学校への学費補助を停止した県の措置を「差別」だと批判した高橋哲哉教授の記事が掲載されました。
去る10月27日、横浜市中央区・市開港記念会館で開かれた神奈川県弁護士会主催の「朝鮮学校の高校無償化除外と補助金問題を考える」講演会で、講師の高橋哲哉・東京大学大学院教授(哲学)は「県による補助金支給停止の措置は憲法や国際人権法に反する差別だ。支給を再開するべきだ」と批判しました。
神奈川県は、教科書に拉致問題の記述がないことを理由に昨年度、県内の朝鮮学校に通う児童・生徒に対する学費補助金の交付決定を留保し、今年度については、予算案にも計上しませんでした。高橋教授は神奈川朝鮮中高級学校で使われている副教材を紹介しつつ「拉致問題が日朝の歴史を踏まえ、日本の学校以上に丁寧に教えられている。なぜ教科書に書かれていないという理由で差別的に扱えるのか理解できない」と県側の理不尽な口実に疑問を投げかけ、教育内容に不当に介入する姿勢も批判しました。
教育と国家の問題について第一人者であり、愛国心教育を批判する著書「教育と国家」を執筆した高橋教授は無償化除外の問題と補助金不支給の問題は「言葉や文化、歴史を奪い日本への同化を強いた植民地支配当時の反復」だと指摘しました。
また、教授は戦前から続く政府の民族差別的価値観や安倍政権下で強まる歴史修正の動きと北朝鮮への敵視政策がヘイトスピーチまではびこる社会の背景にあると語りました。朝鮮学校に対する差別政策を止めるには「民族教育権をはじめマイノリティーの権利保障は憲法や国際人権法で確立された原則だと認識を共有する必要がある。同時に植民地支配の責任に向き合うために歴史を知らなければならない」と市民社会に呼びかけました。
講演会では、神奈川朝鮮中高級学校の生徒も登壇し「面会した県の職員から差別などしていないと言われ、疑問と憤りを覚えた」と訴えました。
この講演会の同日、2016年度に打ち切られた補助金の支給再開を申し入れるために、川崎朝鮮初級学校の保護者と教職員が県を訪れていました。そこでも県私学振興課の担当職員は「特別扱いのつもりはない」と言い放ったそうです。「数ある外国人学校の中で教科書の記述が問題視され、補助金が支給停止にされたのは朝鮮がこうだけだ。『補助制度は子どもの学ぶ権利を等しく保障するのが目的であるはずなのに朝鮮学校に通っているというだけで権利が侵害されている。自らが設けた制度の趣旨に反しているという矛盾になぜ気がつかないのか」と保護者代表の一人は嘆きました。
神奈川県は「人権施策推進指針」の中で「誰もが個人として尊重され、機会の平等を保障され、排除されることのない社会を目指す」と謳っている。
保護者と教職員らは「他の子ども達と同様に自国の言葉と文化、歴史を学べる環境を作って欲しい。多文化共生、人権擁護のため、差別のない補助金支給を求める」と訴えました。