既報の通り、去る3月14日、福岡地方裁判所小倉支部203号法廷で全国5つの「高校無償化」裁判のうち最後となる地裁判決が下されました。
2013年12月から始まったこの裁判は、大阪での「無償化」裁判、高裁判決の直前2018年9月20日までの5年3ヶ月、20回にも及ぶ口頭弁論を重ね闘われてきました。
不当判決。
68名の原告をはじめとする九州朝鮮高級学校に学ぶ生徒たち、保護者たちはもちろん、民族教育を守りたい一心で支援活動に勤しんできた同胞たちや日本人支援者たちの願いと希望をあまりにも無残に打ち砕く判決でした。
何人にも等しく認められるべき「学習権」についての審理が何ら真摯に行われた痕跡すら認められない判決文には、兼ねてから指摘されてきた「ハ条項削除」と「規程13条適合性」の矛盾に対する事実認定はおろか言及すらありませんでした。
320名にものぼる傍聴希望者たちで溢れかえった裁判所前は、開廷後ほんの数分で出てきた若手弁護士らの広げる「不当判決」の紙をしばし呆然と見つめるしかありませんでした。
そして、あちらこちらから沸き起こる怒号。
「朝鮮学校を差別するな!」、「学ぶ権利を奪うな!」
生徒たちも溢れる涙を拭おうともせず叫び続けます。
「この子たちは日本と韓国・朝鮮を結ぶ希望の架け橋です。未来を担う子どもたちを差別することは許されません!!」オモニたちも叫びます。
止まない怒号の中にひときわ悲痛な響きがありました。高齢の同胞が一人、裁判所を正面に見据え絞り出すような声で叫びます。「お前ら筑豊を知らんのか!俺の兄貴たちの骨は未だに炭鉱の土の中に埋まっている。日本は謝罪も賠償もしない。俺たちも散々差別されてきた。ついには孫たちまで差別する。ええ加減にせえ!」そして、「裁かれたの俺たちじゃない、俺がお前らに判決を言い渡す!有罪じゃ!!」、「恥を知れ!そして覚悟せえよ!何があっても絶対に許さん!!」となりでは全国から集ったオモニ会の代表たちが、子どもらの平等な学習権を求める内容の横断幕を握りしめながら「アリラン」を歌いました。涙声の歌は徐々に重なり、やがて大合唱となりました。幼い生徒たちが、先生たちが、同胞たちが、そして日本人支援者たちが一緒に歌いました。合唱の合間に沈痛な、でも力強いシュプレヒコールが響きました。
午後の記者会見に続き、夕方からは「北九州私立商工貿易会館」に場所を移し、「九州朝鮮高級学校生『無償化』裁判判決報告集会」が行われました。
集会に先立ち、九州朝鮮高級学校の教務部長から緊急報告がありました。
判決言い渡し日を直前に控えた3月11日、九州朝高最寄の「折尾」駅前で在特会から派生した「日本第一党」なる右翼政党が通学時間帯に合わせてヘイトスピーチを行なったということでした。彼らはハッキョへと向かう生徒たちを指差しながら 「日本がこんなんだから朝鮮人に舐められている。みてください朝鮮人の子供たちはチマチョゴリ着てないでしょ 。朝鮮人はさっさと国に帰れ、朝鮮人は追い出さなければならない 」などと暴言を吐きました。
拡声器から吐き出される聞くに耐えない罵詈雑言におののきながら生徒たちは学校へと向かったそうです。教務部長は怒りに震える声で、生徒たちへの直接的なヘイトを決して許すことはできないと指弾しました。
集会は、弁護団メンバーでもある清田弁護士の司会で始まりました。
司会者の開会宣言の後、まずは弁護団から金敏寛弁護士が登壇し、この度の裁判・判決報告をしました。金弁護士は、生徒たちの訴えの正当性と共に司法の判断の過ちを指摘し、何があろうと不当判決に屈することなく高裁へと立ち向かってゆこうと呼びかけました。
次いで朴憲浩弁護士が、判決文の分析報告を行いました。朴弁護士は、判決を一言で「不誠実で空虚」だと断じました。そして、高裁でも正しいことを地道に諦めず訴え続けると語りました。
続いて九州朝鮮高級学校・全晋成校長が福岡朝鮮学園の声明文を読み上げました。全校長は声明の中で「不当判決にひるむことなく、生徒たちを励ましながら、今後とも民族教育の普遍的価値を実証し、民族教育を受ける権利は法的保護に値する正当な権利であるということを訴え続け」ると誓いました。(声明文はこちら)
集会は連帯のあいさつへと移りました。
同じ「高校無償化」裁判を闘う東京・愛知・大阪・広島からそれぞれ学園関係者やオモニ会代表、支援者たちが一緒に登壇し、不当判決にめげず、共に力をあわせて最後まで闘おうと熱いエールを送りました。
連帯あいさつの次に、九州朝鮮高級学校・生徒たちが公演アピールを行いました。生徒たちは、無関心やむき出しの悪意に晒されながらも街頭に立ち「学ぶ権利」を訴え続けた運動の意義を問う小演劇の後、日本の高校生たちと肩を並べて学ぶ日が来ることを願う強い思いを込めた歌を歌いました。生徒たちの思いの丈は参加者たちに届き胸を打ちました。
その後、九州朝鮮中高級学校オモニ会の面々が登壇し、代表して梁会長がアピールを行いました。福岡県下にあるすべての朝鮮学校のオモニたちが祈りを込めて製作した「折り紙チマチョゴリ」が紹介され、必ず「等しく学ぶ権利」を勝ち取るまで諦めずに闘い続けると決意を披瀝しました。
続いて留学同に所属する大学生たちが登壇し、後輩たちのためにも民族教育の権利を守る活動を続けてゆくと決意表明しました。
この日の集会には韓国から傍聴に駆けつけた支援者たちも多数参加しました。彼らは一様に今般の裁判を通じて露わになったのは朝鮮学校の不当性ではなく、むしろ日本社会のいびつさだと指摘し、それを確定させたのが今日の不当判決だと語りました。また、韓国で繰り広げられている様々な朝鮮学校支援活動にも触れ、「民族教育を守り続ける皆さんの活動が地道に理解と賛同を広めている」と指摘しました。アピールの最後に「モンダンヨンピル」の事務局長を務める金明俊監督が、裁判費用として寄付金を手渡しました。
その後、全国オモニ連絡会から各地の代表らが登壇し、京都朝鮮中高級学校オモニ会の朴会長がアピールを行いました。
その後、「朝鮮学校無償化実現・福岡連絡協議会」の中村元氣代表が声明文を共有しました。中村代表は、この日の「不当判決を決して認めるわけにはゆかない」と厳しく語り、民族教育権を勝ち取る勝利の日まで不断の努力を続けてゆくと誓いました。
集会の最後に、弁護団の服部弘昭弁護団長が今回の裁判闘争とこの日の判決を改めて振り返り、高裁での新たな法廷闘争に向けた決意を表明しました。
会の締めは参加者前での大合唱でした。毎週金曜日、文部科学省前で行われている「金曜行動」の歌「声よ集まれ、歌となれ」。この日、裁判傍聴と報告集会に詰めかけた参加者全員、これからも続く民族教育権利を守る闘いへの決意を込めて歌いました。