ジュネーブ報告集会

2019年2月15日。東成区民センター大ホールにて、「国連『子どもの権利委員会』ジュネーブ報告集会」が行われました。
「大阪府オモニ連絡会」と「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の共催で行われたこの日の集会には、子どもたちの学ぶ権利を勝ち取るための運動において常に最前線で声を上げ続けるオモニたちが国際社会に向けて朝鮮学校の置かれた状況、日本社会における差別の現状を直接訴えかけた貴重な活動の報告を聞こうと、朝鮮学校保護者たちや同胞、日本人支援者らが多数参加しました。
集会は、「ウリハッキョを守る歌」、「大阪勝訴」、「金福童ハルモニを偲んで」と、三つの内容で編まれた映像から始まり、去る1月28日に永眠された金福童ハルモニの功績を讃え、冥福を祈る参加者全員の気持ちを込めて黙祷を捧げました。その後、司会の裵香淑さんが開会を宣言し、主催者を代表して金亜紀さんが挨拶をしました。挨拶では「高校無償化」適用を求め始められた裁判闘争が9年目を迎える中、子どもたちの「学ぶ権利」を勝ち取るための闘いが新たなステージへと移ったとしながら、「火曜日行動」や要請、抗議行動、イベントや集会などこれまで行われてきた活動の意義を振り返りながら集会内容が紹介されました。そして、日本に暮らす全ての子どもたちの尊厳が平等に守られることを願いながら、今日の集会から大きな「学び」を得て「連帯」を確かめあえる場にし、更なる運動の拡大をもって朝鮮学校の教育権を求める大きな世論を巻き起こそうと呼びかけました。

続いて、全国オモニ連絡会代表として1月14日からスイスのジュネーブに赴き、精力的なロビー活動を行なってきた大阪朝鮮高級学校オモニ会代表が報告をしました。現地での映像を交えたプレゼンを通して代表は、朝鮮学校に子どもを通わせている当事者の自分たちが国連の場で直接声を上げ訴えかけることの意義を語りました。特に、朝鮮学校の置かれた現状に大きく関心を持ってくれた委員に、具体的な資料を持って訴えた際、自分の言葉にひとつ一つ大きくうなずきながら、当たり前のこととして子どもたちの「学ぶ権利」を求めるオモニたちの心情に痛切な共感を示してくれたこと、そしてその委員が、朝鮮学校問題を差別事象として一向に認めようとしない日本政府代表らを詰問した事実を報告し、正義ある我々の声は必ず国際社会に届くと確信に満ちた声で語りました。そして最後に、権利闘争は長くて辛いものだが、子を持つオモニたちがもう少し頑張ってこの闘争を終わらせよう、幼い子どもたちに引き継がせることがないよう闘って勝とうと力強く訴えました。
次に、オモニたちのロビーイングに同行した在日本朝鮮人人権協会の宋恵淑さんが登壇しました。2001年から「人権条約」に関する国連審査に携わってきた宋さんは、その18年のキャリアの中でも全く経験のなかったこととして、今回、自分たちが準備した資料の受け取りを議長に断られた事実を報告しました。その原因として、日本の抱える人権諸問題について訴える活動を露骨に邪魔立てする集団が国連にも押しかけ、時には委員を取り囲み日本政府に対する厳しい質問を取り下げるよう恫喝するといった事案が、委員会をナーバスにさせていると分析しました。事実、今回の「子どもの権利委員会」にもその様な一団が大挙して詰めかけ、オモニたちの活動も制限され悪影響を受ける事態になったと宋さんは報告しました。それでも、全国のオモニたちを代表し、長旅の疲れにも耐えながら果敢なロビー活動を展開したオモニたちの活躍を克明に紹介した宋さんは、特に2010年3月の「人種差別撤廃委員会」に端を発し5度目となる「勧告」が今回出された意義を振り返りました。何よりも今回の「勧告」がより具体的な内容をもって日本政府の差別政策を指摘し、改善を促したと文言を分析しながら解説しました。
「朝鮮学校への『高校授業料無償化』適用を促進するために基準を見直す措置をとることを勧告する。」
「朝鮮学校のみを除外するのは差別であるから是正せよ」としたこれまでの勧告から大きく一歩踏み込み、日本政府が差別を認めず「審査基準に適合するに至らなかった」と詭弁を繰り返すなら、その「基準」自体を見直せと強く求めた形です。宋さんは、こうした大きな成果がもたらされた要因はオモニたちをはじめとする当事者たちの地道な活動の賜物であると指摘し、この度の地道な活動もこれまで同様、国連の委員たちにしっかり届いていると語りました。そして、長きにわたって続けられてきた闘いの中で獲得してきたものを携え、これからも共に闘おうと強く訴えかけました。

  • 集会に先立ち、金福童ハルモニに黙祷が捧げられた。

次に、本サイトでもご紹介した「文部科学省要請行動」の報告がありました。
先に金亜紀さんがパソコンをスクリーンに映し出しながら要請行動の概要を報告しました。今回の要請行動では、文科省への直接的な働きかけのみならず、各会派を回りながら国会議員への陳情やロビー活動、そして文科省前での「金曜行動」参加と、寸暇を惜しんで意欲的な活動がなされたこと、そして、それらを通して朝鮮学校の実情を広く知らしめることができたことを報告しました。次いで、「無償化連絡会・大阪」を代表して東京に行った大村和子さんが報告しました。大村さんは、対応に出てきた文科省担当者の無機質な対応に憤りを露わにしながら朝鮮学校の窮状や子どもたちの純粋な姿を声を詰まらせながら訴えたと語りました。そして、自分たちに向けられた日本社会の差別に胸を痛めながらも希望を持って朝鮮学校で学んでいる初級部児童の作文を怒りを込めて読み上げたと報告しました。大村さんは、日本人として自分もこの児童の思いに報いるため引き続き頑張って活動すると最後に誓いました。続いて、大阪朝鮮高級学校オモニ会副会長が登壇し、先代から受け継いだ民族教育が危機に瀕している。ウリハッキョをこのままの状態で子どもたちに引き継がせてはならないと訴えました。それこそが子どもを朝鮮学校に通わせている親の世代の責務だと、力を込めて訴えました。そして、先代から受け取ったバトンを子どもたちにしっかりと渡すために最後まで共に闘い、権利を勝ち取ろうと呼びかけました。
続いて、弁護団から李承現弁護士が登壇し、最高裁へと上告し、大詰めを迎えている「高校無償化」裁判について解説しました。李弁護士は、子どもの学ぶ権利を一顧だにしなかった先の高裁判決の不当性を糾弾し、さらに今回提出した「上告理由書」に込めた訴えについて説明しました。そして、正義は我々にあるとして、団結と闘争の継続をもって法廷闘争を最高裁へと導き、必ず勝利しようと呼びかけました。
続いて「無償化連絡会・大阪」の共同代表、藤永壯先生が発言しました。
藤永先生は、「高校無償化」裁判が最高裁の判断を待っている状況である中、今秋から実施される「幼児教育の無償化」に関しても朝鮮学校幼稚班には適用しないと閣議決定されるなど民族教育に対する差別政策は拡大している残念な様相だと指摘しました。この様な不当な裁判結果、差別政策を決して許さないと繰り返し訴え続けなければならない、改めて今、我々にできる活動は何なのか問い続けなければならないと指摘しました。そして、3月24日予定している「MOREフェスタ(祝祭)2019」への積極的な参加を呼びかけました。その上で今日の集会を通して、民族教育の権利擁護を訴える我々の声が国際社会に届き共感を持って広がりを見せている状況が希望を与えてくれると語りました。とりわけ、韓国からの温かい支援が数多く寄せられ、メディアの力により広く拡散している現状は大変重要な変化であり、その要因は他ならぬ我々自身が行ってきた地道な活動の結実であると指摘しました。「私たちの蒔いた種がようやく芽を出そうとしている。」この大切な「連帯の輪」を益々広げてゆこうと呼びかけました。これら朝鮮学校支援の運動を、融和と共存の兆しが著しい朝鮮半島の平和統一につなげ、ひいては東アジアの平和と安定に寄与できる大きな流れ、大きな営みの一環となる様、共に手を取り合って頑張ろうと力強く呼びかけました。

集会の最後に「集会アピール」が読み上げられました。朝鮮学校に対する差別の是正を強く促す「勧告」が出された今回の成果を、これからも続く朝鮮学校と子どもたちの「学ぶ権利」を守る闘いに活かし、真の共生社会を目指して力を合わせて頑張ろうと呼びかけたアピール文は参加者たちの大きな拍手で採択されました。
子どもたちへの差別を諌める国際社会の厳しい目に恥じることもなく、自らの排外的な政策の本性を糊塗し続ける日本政府をこれからも厳しく追求し、子どもたちの「等しく学ぶ権利」と民族教育権を勝ち取るための闘いはこれからも続きます。私たちの声は必ず世界に届き、さらに広がり続けると信じ、活動を一層盛り上げてゆく意志を参加者全員が共有して集会を終えました。

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