文部科学省 / こども家庭庁への要請
朝鮮学校に学ぶ子どもたちへの差別是正を求めた要請文を携え、去る9月12日(金)、「大阪要請団」が国会議員会館を訪れました。
今回の要請は、2023年4月1日から施行されている「こども基本法」が「日本国憲法および児童の権利に関する条約の精神にのっとり、全てのこどもが、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、こども政策を総合的に推進することを目的」としているにも関わらず、朝鮮学校に通う子どもや保護者が「こども基本法」の理念とはかけ離れた差別にいまなお直面し続けている状況を是正すること、また、今年2月に行われた自由民主党・公明党・日本維新の会の3党合意により、⾼校無償化制度が大幅に⾒直されたことを受け、今もって朝鮮高級学校生徒のみが除外されている差別的な状況を改め、朝鮮高級学校を高校無償化制度の対象とするための措置を速やかに取ることと、朝鮮幼稚園を幼保無償化制度の対象施設として認めることを強く求めております。
三原じゅん子内閣府特命担当大臣と阿部俊子文部科学大臣に宛てた今回の要請文は、学校法人大阪朝鮮学園、大阪朝鮮中高級学校オモニ会・アボジ会、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪、在日本朝鮮人大阪人権協会と、7月28日、東成区民センターで行われた「高校無償化裁判・歴史的勝訴判決8周年記念集会 〜次世代に渡す希望のバトン〜」参加者一同の名義で出されました。
大阪要請団は、要請文の名義に名を連ねた各団体から代表が1名ずつ加わり構成されました。12日、国会議員会館を訪れた要請団は積極的に議員事務所を訪問し、要請の趣旨を伝え要請文を手渡しました。今回の参議院選挙で初当選を果たした社会民主党のラサール石井議員は、在日朝鮮人の民族教育事業に深い理解を示し要請団をあたたかく出迎えてくれました。そして、朝鮮学校のみが政治的理由により高校無償化制度から除外された経緯とそれに追随する形で支給停止された大阪府・市の補助金について要請団の説明に真摯に耳を傾けてくれました。
午後3時から参議院議員会館で、立憲民主党の25名が中心となって今年4月17日に結成された「朝鮮学校に対する公的補助の実現をめざす国会議員の会」から8名の国会議員と、社会民主党の2名、計10名の国会議員たち立会いのもと要請が行われました。
まず、今回要請団の代表を務めた大阪人権協会の文時弘事務局長より、差別政策にあえぐ朝鮮学校の現況と要請の趣旨について説明がありました。文代表は要請の前提として、2023年4月から施行された「こども基本法」が朝鮮学校をはじめとする各種学校に通う子どもたちも対象としていることを明確に示した上で、「高校無償化」や「幼保無償化」など国が打ち出した制度から朝鮮学校に通う子どもたちだけが取り残されている現実が「こども基本法」の趣旨とことごとく矛盾していると厳しく指摘しました。その後、要請団のメンバーたちがそれぞれの立場から発言しました。朝鮮学校保護者たちを代表して要請に臨んだ3人の保護者会役員たちは、朝鮮学校で学ぶ子どもたちが様々な困難にも負けず、朝鮮学校でのびのびと民族的アイデンティティーを育んでいる姿を紹介しつつ、政治的な問題と何ら関わりのない子どもたちが晒されている差別的な状況を一日も早く是正するべきだと訴えました。朝鮮学校を支援する日本人を代表して要請に参加した「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」事務局の大村和子さんは、「高校無償化」制度からの除外、大阪府・市による補助金支給停止などにより被っている朝鮮学校の財政難について触れ、学校運営の足しになればと地道に続けてきた「給食活動」や、毎週火曜日に大阪府庁前に立ち朝鮮学校への差別是正を訴え続けて13年目を迎えた「火曜日行動」について語りました。大村さんは、一連の朝鮮学校排除を是正し真の多様性を実現する問題は、在日コリアンの処遇に関わる問題であると同時に日本社会の問題であると強く訴えました。そして、「こども基本法」が謳っている通りに「すべての子どもたち」の学ぶ権利を保障するよう強く求めました。
続いて同席した国会議員たちも発言しました。ある議員は、朝鮮学校発祥の歴史について述べ、日本による植民地統治が在日の民族教育と決して切り離せない関係性を有するが故に、朝鮮学校の運営に日本政府として責任の一端があると指摘しました。また、ある議員は、多様性が求められる国際化時代にあって民族のアイデンティティーを育む朝鮮学校の存在は、日本社会にとっても有益だと語り、子どもたちの学びに対するいかなる差別もあってはならないと訴えました。
しかし、対応に出てきた省庁の担当者からの返答は期待を大きく裏切る冷淡なものでした。
「法令に基づいて定められた審査基準に適合すると認められるに至らなかった。」12年をさかのぼる法廷闘争の頃から繰り返されてきた「血の通わない空虚なことば」を担当者は淡々と読み上げるばかりでした。
「木で鼻をくくった」ような担当者の発言に憤慨した議員が、要請に対する真摯な対応を求め、文書による正式は返答を求めて担当者たちとのやり取りは終わりました。
最後に、国会議員団を代表して立憲民主党の徳永エリ議員が、これからも朝鮮学校に対する差別を是正しすべての子どもたちが等しく学べる社会の実現を目指して活動を続けてゆこうと力強く呼びかけてました。そして、要請団を代表して大阪朝鮮中高級学校アボジ会長から担当者へと「要請文」が手渡されました。
要請団の代表たちは、その後、東京朝鮮中高級学校へと移動し「朝鮮高級学校無償化実現のための緊急集会」に参加しました。
集会では、東京朝鮮学園の報告に次ぎ、来賓である国会議員たちの挨拶や、当事者である保護者代表と高級学校生徒の発言がありました。保護者代表と生徒は、朝鮮学校の「高校無償化」除外は日本政府による不条理な官製差別に他ならないと糾弾し、後輩たちの代にまで引き継いではならないと強く訴えました。
最後に東京の「要請文」が読み上げられ、集会の決議として万雷の拍手をもって採択されました。
朝鮮学校の差別的処遇改善を求める日本政府への要請はこれまで度々行われてきました。しかし、今回のように多くの国会議員たちが趣旨に賛同し立ち会って行われた活動の意義は決して小さくありません。この問題を日本社会にを広く知らしめる格好の機会となりました。そして、朝鮮学校の子どもたちが差別なく学べる環境を整えるための活動を一層広げてゆく大きなきっかけとなりました。