つながるバトン

2025年7月28日、東成区民センター。
8年前の歓喜が再びよみがえりました。「高校無償化裁判・歴史的勝訴判決8周年記念集会 〜次世代に渡す希望のバトン〜」。
2017年7月28日、大阪地方裁判所において言い渡された「高校無償化」裁判の歴史的勝訴判決。その意義を振り返り、これからも続く新たな闘いの起点とするため、会場となったホールには250名を超える多くの人々が集いました。

  • 会場となったホールには歴史的勝訴判決の歓喜を再び分かち合うため多くの人が詰めかけました。

歴史的勝利に沸いた大阪地方裁判所のあの日の模様を写した短い映像で集会は幕を開けました。
立ち見の参加者も出るほどの熱気あふれる会場に先ず登壇したのは、この裁判で意見陳述書を書いてくださった同志社大学社会学部の教授で歴史人類学者の板垣竜太教授。教授は自ら「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋(こっぽんおり)」の共同代表を務めておられます。基調講演で教授は、全国5箇所で展開された同裁判において唯一の勝訴となった大阪の判決が持つ意義と、殺伐とした今日の社会情勢にもつながる民族教育差別の歴史と構造を、プレゼン画面を使って明晰な語り口で紐解かれました。「一条校となるか、もしくは日本と北朝鮮が国交を結べば適用される。」板垣教授は、朝鮮高級学校のみを除外する政府の倒錯した言い分を明確に断罪し、無償化除外を一見「朝鮮学校寄りに」報じたメディアのスタンスにも同時にメスを入れました。「朝鮮学校も変わろうとしている。」「日本学校に学ぶ高校生たちと何ひとつ変わりない」。さも理解ある寛容な態度を示しているようで、それこそ「包摂的差別」だと教授は説明します。逆説的にそれは「公教育に追従しなければ」、「自らのアイデンティティーを求めるならば」認めない事を意味すると。「従うなら施してやる」と言う傲慢な態度は政府もメディアも一貫しており、その差別の構造が肥大化したのが今日の日本社会の姿であると教授は説きました。そして、講演の最後に教授は、あの日の歴史的な勝利がもたらした大きな意義について触れ、これからも続く闘いの確かな土台になったと締めくくりました。

次いで舞台に上がったのは、法廷闘争をたたかった当事者たちでした。
高校無償化裁判・弁護団長の丹羽雅雄弁護士、学校法人大阪朝鮮学園・前理事長の玄英昭さん、無償化連絡会・大阪の大村和子さん。
三人は2017年の歴史的勝訴判決が持つ意義の話を軸に、朝鮮学校に学ぶ子どもたちの権利を守ためいかに闘ってきたか、三者三様それぞれの立場から語りました。と同時に三人のお話からは「三位一体」の力強い連帯の姿を窺うことができました。そして三人は共に「最後まで朝鮮学校に学ぶ子どもたちのために闘う」決意を高らかに宣言し、万雷の拍手を浴びて舞台を降りました。

そのあと集会はリレートークへと移り、当時の大阪朝鮮高級学校・生徒から弁護団に加わる前に判決の「旗出し」で脚光を浴びた若手弁護士へと、そして最後に子どもたちを守り闘い抜いてきた歴代の高級学校オモニ会長たちへとマイクが渡りました。登壇者たちは皆、あの日かみしめた喜びを呼び覚ましながら裁判闘争と歴史的な勝訴判決の意義について語りました。そして、あの日手にした大切なバトンを次の世代へと引き継いでゆくと決意を表明しました。最初に舞台へ上がった若い卒業生が語った言葉が印象的でした。「これまでは『大切に守られる存在』だったけれど、これからは『大切なものを守る存在』になる。」力強い言葉の中に揺るぎない決心が現れていました。

最後に、これからの活動と、文部科学省への「要請」について呼びかけがありました。
まずは弁護団の李承現弁護士から来る11月22日、大阪朝鮮中高級学校で開催される「全国弁護士フォーラム」の告知がありました。そのフォーラムのプレイベントである今日の集会が持つ意義について語った李弁護士は、全国5箇所で繰り広げられた「高校無償化裁判」において唯一勝訴判決を勝ち取った大阪の地で開かれる「弁護士フォーラム」が特別な意味を持つと訴えました。そして、多くの参加者が大阪朝鮮中高級学校の立派な新校舎に集い、民族教育の素晴らしさに触れてほしいと呼びかけました。
その後、「幼保無償化」、「高校無償化」をはじめとする朝鮮学校の子どもたちの権利を守る活動を日々展開している文時弘さんが、文部科学省に大阪から「要請団」を送る計画について説明しました。文さんは依然解消されていない制度的な「朝鮮学校差別」を是正するためこれ以上座視していてはならないと怒りを込めて力強く訴えかけました。そして保護者代表が読み上げた「要請文」を今集会の決議として文科省に届けようと呼びかけました。大きな拍手をもって「集会決議」となった「要請文」を携え、9月頃に「要請団」を送ることが採択されました。
集会の最後に、早625回を数える「火曜日行動」で常に歌い継がれてきた歌「勝利のその日まで」を大阪朝鮮歌舞団メンバー二人のリードで大合唱しました。

2017年の夏、歓喜を分かち合った多くの人々が8年後のこの日集会に集い、再びあの日の喜びと大いなる意義を共有しました。
そしてこれからも続いてゆく闘いに臨む決意を新たにしました。

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