小さき者への迫害

2018年6月28日夜。また、何の罪もない子どもたちが差別に満ちた「いじめ」にあいました。神戸朝鮮高級学校の生徒たちが修学旅行先の祖国から帰った際、関西国際空港の税関で、お土産を全て没収されたということです。
生徒たちが心に負った傷を思うと言葉がありません。

FacebookやTwitterなどに投稿された怒りと悲しみの言葉を以下に引用します。

神戸朝鮮高級学校・教員のfb
6時間前
6.14-28にかけて神戸朝高生の修学旅行に引率として行ってきました。平和と繁栄の流れの中、行く修学旅行はまた格別な思いがありました。なによりも楽しくなによりも感動的な15日間が、最後は最悪な修学旅行に。
お土産、没収の嵐。
泣きわめく女子生徒、悔しくて悔しくて怒りの抗議をする男子生徒。地獄絵図でした。
税関の対応は「上の指示で輸入が禁止されているから」のみ。
若干18歳の高校生に「任意放棄書」なるものを「強制的に」書かかせる当局の方々には人の心がないのでしょうか。
あまりの悔しさに、せめてクッションなどのお土産の紙だけでもと一枚一枚、回収する男子生徒。
ゲートを出た瞬間に泣き崩れていました(しかも飛行機の遅れもありゲートを出たのは0:00過ぎていました)。
悔しさに今も眠れません。
××
もちろん、お土産を奪われたショックも大きいです。これからはそんな事が無いように、どうにか無事に持ってくる手段も考えないといけないとは思います。
でも生徒たちがなにに泣き、なにに怒ったか。
自分たちの「朝鮮人としての尊厳」に傷をつけた担当官、当局への涙、怒りであり、「モノ」への執着ではなかったのでしょう。結果はわかっていても、怒りに震え私の手を何度も振り払いながら抗議する生徒たちを見ながら、心の底からそう思いました。

その多くが初めての祖国訪問となる朝高の修学旅行。思い出を残らず奪い取られた生徒たちの気持ちはどれだけ傷ついたのでしょうか。

この、あまりにもショッキングな事件をメディアも報じました。

修学旅行で北朝鮮土産「税関が不当に押収」総連が抗議
(朝日新聞デジタル)2018年6月29日23時45分

朝鮮学校の生徒が修学旅行で北朝鮮から持ち帰った土産品を税関で不当に押収されたとして、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は29日、日本政府に抗議する会見を開いた。徐忠彦・国際統一局長は「日本政府が対話を望むならば、非人間的な措置をやめるべきだ」と主張した。
朝鮮総連によると、神戸朝鮮高級学校(神戸市)の生徒62人が28日夜、「祖国訪問」を終えて関西空港に到着した際、約半数の生徒が、税関職員に北朝鮮の国旗などが描かれた化粧品や薬などの土産品を、経済制裁で持ち込みが禁止された輸入品だとして押収されたという。押収品には親族や友人からの贈り物も含まれていたという。
徐氏は「お土産まで取り上げたのは暴挙」と述べたうえで、米朝和解の流れが出てきた中で、「唯一、日本政府だけが敵対行為に固執し、子どもの人権を踏みにじっている」などと非難した。
大阪税関関西空港税関支署は取材に「個別の事案については答えられないが、法令に基づいて適切に対応している」とコメントした。税関関係者によると、政府は核実験などへの制裁措置として、北朝鮮からの全ての貨物について、経済産業相の承認がない限り輸入を禁じている。税関では旅客の土産品なども含め、そのつど経産省に確認しているという。
経産省貿易管理課は「個人の携帯品は、出国時に持ち出したものや旅行中に使用したと認められるものを除き、個別に承認することになる」としている。

SANSPO.COM 2018.6.29 21:13
北朝鮮土産、没収を非難 総連「生徒の人権侵害」

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は29日、神戸朝鮮高級学校(神戸市)の生徒が北朝鮮への修学旅行から28日に帰国した際、関西空港の税関で親族からの土産を没収された、と明らかにした。政府の独自制裁に伴う措置だが、総連は「生徒の人権を踏みにじる行為」と非難し、税関に謝罪と再発防止を求めた。
総連によると、同校の生徒62人は28日夕、2便に分かれて北京経由で帰国した。税関職員が生徒のかばんを開け、北朝鮮の国旗や文字が入ったクッションや化粧品などを没収した。最初の便では6人、2便目に乗っていた39人の半数以上が荷物の一部を没収された。
昨年までの修学旅行では、親族からもらったものだと説明すれば没収されないこともあったという。記者会見した許敬校長は「泣きじゃくる子もいて、生徒たちの心の傷は深い。法律に基づいてやったと言うかもしれないが、日本と北朝鮮の関係にとってこれが良いことなのか」と抗議した。

KORYO JOURNAL(コリョ・ジャーナル)
「コラム」 在日いじめと日朝会談      2018.06.29

6月12日の朝米首脳会談以降、「異次元の圧力外交」一辺倒だった安倍政権が手のひらを返して日朝首脳会談に取り組む意欲を示している。
モンゴルで開かれた北東アジア地域の安全保障問題を話し合う国際会議で朝鮮側の代表に接触を試みる等アプローチを掛け始めた。
だが、そのような言動と本音は違う。 「朝鮮との対話希望」を語った舌の根も乾かぬうちに安倍首相は、「首脳会談をこちらがやりたいといえば足元を見られる」「私は北朝鮮にだまされない。1994年から拉致問題に取り組んできたが、何度もだまされてきた。北朝鮮のだましの手口は分かっている」「圧力を緩めてはダメだ。中国、韓国も制裁を緩めてはならない」と拉致被害者家族の前で平然と言ってのけた。 要は日朝会談に本気で取り組む気がないのだ。
国際情勢が新たなステップに進んだこの期に及んでも、在日朝鮮人に対する日本政府の悪辣かつ執拗な「いじめ」・差別が未だに全く改善される兆しを見せない事からも、それは容易にうかがえる。 一つ例を挙げよう。
神戸の朝鮮高校生たちが6月14日から28日の日程で、祖国である朝鮮に修学旅行に行ってきた。
引率した関係者によると「平和と繁栄の流れの中、行く修学旅行はまた格別な思い」があり「なによりも楽しくなによりも感動的な15日間」だったのが、「最後は最悪な修学旅行に」なってしまったという。 到着した関西国際空港の税関で、生徒たちが朝鮮から持ってきた土産を全て没収されてしまったのだ。
高校生からお土産を全没収、「任意放棄書」記入を強制
「お土産、没収の嵐。 泣きわめく女子生徒、悔しくて悔しくて怒りの抗議をする男子生徒。 地獄絵図でした。 税関の対応は『上の指示で輸入が禁止されているから』のみ。若干18歳の高校生に 『任意放棄書』なるものを『強制的に』書かかせる当局の方々には人の心がないのでしょうか。あまりの悔しさに、せめてクッションなどのお土産の紙だけでもと一枚一枚、回収する男子生徒。ゲートを出た瞬間に泣き崩れていました。」
日朝関係の凍結・硬直した現況を打開する為にも、双方の架け橋となり得る在日朝鮮人の存在は非常に注目されるべきだし、また、重要視されて然りだ。 「普通」であれば、日本政府は在日朝鮮人に対する「いじめ」の非を認めて謝罪し、果断に政策転換して在日人脈ラインを生かす方法を取るのがセオリーなのだが、安倍政権にはそのような思考が全くもって欠落しているらしい。
今のままでは、「私たちはもう少し我慢してもいいから、北と南の政権が絶対に安倍とだけは手を結ばないで欲しい」と言うのが、在日朝鮮人の偽らざる正直な心情だろう。 日本政府は深思熟考すべきではなかろうか。

北海道の朝鮮学校を描いたドキュメンタリー映画「ウリハッキョ」のキム・ミョンジュン監督も、この悲しすぎる出来事をいち早く知った一人です。
キム監督のfb投稿は、驚きと怒りをもって瞬く間に広く拡散されました。
以下に翻訳して引用します。

明け方、連絡があった。
神戸朝鮮高級学校3学年生徒の父親。
娘が高校最後の修学旅行で生まれて初めて祖国(朝鮮民主主義人民共和国)に2週間行ってきたのだそうだ。空港から出て来る娘の顔が涙でぐしょぐしょだった。会いたかった家族と久しぶりに会えたからだと思ったのもつかの間、生徒たち全員が怒りと悔しさの表情で泣いていたらしい。
理由はすなわち、
税関が、祖国でもらったすべての「おみやげ」を残らず没収したという。姉妹校の子どもたちが真心込めて書いてくれた手紙や、後輩たちのために買った記念品、2週間一緒に過ごしてくれた祖国のガイドさんたちがくれた贈り物の数々。生徒たちは祖国での夢のような思い出を、そっくりそのまま空港の税関に奪われた。男子生徒も女子生徒も、抗議し、泣き、哀願したが通じなかった。「上からの指示なので従うしかない」という返答のみだった。
安倍政権は肝に命じなければならない。今、彼ら税関職員たちが幼い生徒たちにどんな仕打ちをしているのか、どんな怒りと悲しみと憎しみを植え付けているのかを。
安倍が自身の政治的成功のため命綱のごとく握りしめている「拉致問題解決」。朝鮮学校の問題、在日朝鮮人の問題、日帝植民地時代の問題を謝罪し、補償しない限り解決はできない。
明日、この子たちと会えるコンサートが、「モンダンヨンピル」と日本の方々、同胞たちの力で神戸にて開かれる。
子どもたちをたくさん慰めてあげなければ。
日本がワールドカップ16強に進出した、まさにその時間に起こったことだ。
スタジアムに鳴り響いた「君が代」を斉唱する観衆たちのあのものすごい純真さが怖い。

奇しくもこの事件が起こったのは、「モンダンヨンピルコンサート in 兵庫」の前日でした。傷ついた子どもたちの心を少しでも癒してあげたいと願う気持ちで監督たち「モンダンヨンピル」は来日し、コンサートを大成功させました。
「無償化連絡会・大阪」の藤永壯共同代表と長崎由美子事務局長が、コンサートを観覧しました。
最後に藤永壯教授のfb投稿を引用します。

モンダンヨンピルと兵庫の朝鮮学校の生徒たち、そしてハッキョを支える方々が一体となってつくりあげた素晴らしいコンサートだった。どうしていつもこんなに感動するのだろう。
権海孝代表の夢……いつか朝鮮学校の生徒たちを韓国へ招いてモンダンヨンピルのコンサートを開き、そのまま一緒に京義線に乗って平壌でコンサートを開く……。
そうだ。私たちは夢を語らなければならない。ときに絶望しそうになる今だからこそ。

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