◼️去る5月10日、福岡地方裁判所小倉支部は、九州朝鮮中高級学校卒業生ら68名が原告となり国を相手に起こしている「高校無償化」裁判において、原告の証人尋問申請を却下しました。
その証人とは、文部科学省前事務次官の前川喜平氏。当時の民主党が政権与党になった2009年、大臣官房審議官として高校無償化の制度設計に携わった責任者です。
申請に対し国側は「事務方個人の意見に過ぎず、必要はない」と反論し、鈴木博裁判長は証人を認めない理由として「必要ない」とだけ語っています。
果たして前川氏の証人尋問が本当に必要ないのでしょうか。
福岡地裁小倉支部はさらに、当時の下村博文元文科相の証人採用申請も「必要性がない」として同様に却下しました。
政治的・外交的理由で朝鮮高級学校を同法不指定とした文科相の判断が、裁量権を逸脱していたかが主な争点であるこの裁判において、また、行政手続法などに照らし制度除外の違法性を問うこの裁判で、これ以上の当事者が他にいるでしょうか?
とりわけ、前川氏は様々なメディアの取材に対し、当時の経緯を克明にたどりながら「(『高校無償化』の)対象に含める前提で、朝鮮学校から申請を受け付け、審査もしていた」と説明しています。また、「支援金が授業料に充てられないと言うなら、その挙証責任は国にある」と述べた上で、「支給すれば授業料に充てたかどうかは直ちに分かることだ」と指摘しています。
文科大臣に就任するやいなや露骨な政治外交的発言で朝鮮学校のみの適用除外を示唆した下村氏の真意も、適用対象であった当初の予定を覆された審査の経緯を担当責任者として間近で見ていた前川氏の意見も、当人たちの口から聞く以外に知りうる手立てはありません。翻すと、この二人が証言台に立てば、最も重要な争点に関する問題が詳らかになるということです。
下村氏と前川氏の証人尋問は「不必要」なのではなく、「不都合」だったのではないでしょうか?
もし証人尋問の申請が叶えば、本人の口から語られていたであろう内容が掲載された過去の新聞記事をご紹介します。