補助金裁判、大阪高裁で結審。判決は来年3月20日
・12月6日(水)午前11時。2回目となる「補助金裁判」控訴審の口頭弁論が202号大法廷で行われました。この日、裁判所には8月7日に行われた第1回口頭弁論を上回る148名の傍聴希望者が集まりました。そして、今回は東大阪朝鮮中級学校と北大阪朝鮮初中級学校から中学3年生の生徒たち20名が課外活動の一環として参加しました。10時20分から10分間、整理券の代わりとなるリストバンドが配布され、その後抽選が行われました。朝鮮学校に係る裁判は全国的にも内外の関心が非常に高く、大阪でも常に「大法廷」が用いられます。これまでの4年間、いつも大法廷の91席を上回る傍聴希望者が駆けつけ繰り返し抽選が行われてきました。9月の東京「無償化裁判」で不当判決が言い渡された後ということもありメディアの関心も高く13席が「記者席」にあてられました。11時ちょうどに始まった裁判では、裁判長から原告側が提出した控訴理由書(4)と10月20日付で提出された第1準備書面、12月4日付で提出された第2準備書面が確認されました。そして原告の申請により書面の要旨陳述が二人の弁護士によって行われました。
まず原啓一郎弁護士が陳述しました。原弁護士はまず「高等裁判所からの問題意識があった点、及び地方裁判所では十分な検討が行われなかった重大な点について今回主張し提出した証拠の概要について述べる」として、四つの問題を指摘しました。第1に、別件のである「無償化裁判」で下された判決と本件との間に存在する共通点について述べました。原弁護士は「教育費の負担軽減を図り、教育の機会均等を確保すること」に趣旨を置くという本質において「補助金」を対象とする本件においても変わるところはないと指摘しました。第2に、その要綱を行政庁が変えられるとした一定の「裁量権」は法律の趣旨により拘束されると指摘し、無限定ではないと断じました。そして、今回提出した書面に整理された内容を解説しました。第3に、公安調査庁が作成した文書に掲載されたことを不交付の理由とした不当性を指摘しました。第4として原弁護士は最後に、本件の不交付が憲法13条や教育基本法、私立学校法、国際人権法などの様々な法律及び上位法に違反すると改めて明確に主張しました。
次に李承現弁護士が陳述しました。李弁護士は、今回提出した駒込武京都大学教授の鑑定意見書をもとに陳述しました。鑑定意見書は大阪府が学園に示した「4要件」がいかに不当であり違法なものであるかを私立学校法や私立学校振興助成法に照らし分析しながら「…行政として超えてはならない一線を踏み越え」、「歴史の歯車を70年以上も前に引き戻そうとする暴挙である」と厳しく指摘しました。李弁護士は陳述の最後に、本件の現場である朝鮮学校を裁判官自らが訪れ、子ども達の教育の実際を直接確かめる「検証の申出」を繰り返し強く要請しました。
・陳述が終わり、裁判長が被告大阪府と大阪市の代理人に口頭による意見陳述の有無を確認しましたが、両代理人らはいずれも意見陳述しない旨を伝えました。最後に、裁判長は度々原告弁護団から申請されて来た「検証の申出」を却下するとして、本件弁論の終結を宣言し結審しました。そして判決の言い渡しを来年3月20日の午後3時と宣言し閉廷しました。
・裁判後、大阪弁護士会館前で報告会が行われました。まずは丹羽弁護団長とともに弁護団のメンバー達が自己紹介をし、それぞれ感想を述べました。丹羽弁護団長は、長きに渡り続けられて来た法廷闘争も残すところわずかとなったが最後まで闘い抜くと、判決を前に決意を新たにしました。また、来週12月14日(木)に行われる「高校無償化」裁判控訴審第1回口頭弁論にも関心を持って臨み、より多くの人たちが傍聴するよう力強く呼びかけました。その後、東大阪朝鮮中級学校と北大阪朝鮮初中級学校の生徒代表が傍聴の感想を述べました。二人とも自分たちの「学ぶ権利」を争う法廷での闘いを間近に見ることができたのを貴重な体験だったと述べ、たくさんの支援者たちに支えられていることを実感できたと言いました。そして民族の言葉や文化、歴史をしっかり学ぶことで報いたいと決意を表明しました。
最後に、無償化連絡会・大阪の長崎由美子事務局長が、法廷闘争の最終段階を力を合わせて勝ち抜こうと訴えかけ、参加者全員の拍手をもって報告会を終えました。
補助金裁判控訴審の判決言い渡しは2018年3月20日、午後3時から202号大法廷で行われます。