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高校無償化裁判第15回口頭弁論

・法廷に響いた当事者らの訴え・
■10月14日、最終局面を迎えた大阪・高校無償化裁判が15回目の口頭弁論を迎えました。この日、法廷には同裁判に陳述書を提出した当事者らの中から選ばれた4名が証人尋問に臨みました。この日も朝鮮学校関係者と保護者・同胞、日本人支援者ら116名が傍聴に駆けつけました。また、大阪同様「高校無償化裁判」を闘う東京、愛知、広島、福岡から弁護団の弁護士らが傍聴しました。
■法廷ではまず、朝鮮高級学校で学ぶ生徒たちの日常を記録したDVD映像が上映されました。15分間の映像には大阪朝鮮高級学校の歴史と、勉学やスポーツに励む生徒たちのひたむきな姿が映し出されました。
■映像の視聴が終わった後、証人尋問が行われました。朝鮮学校に深く関わる当事者として証言台に立ったのは大阪朝鮮学園・玄英昭理事長と当時、大阪朝鮮高級学校で教鞭を執っていた元教員、当時の生徒、そして日本アジア関係史の専門家で一橋大学名誉教授の田中宏氏の4名です。証人らは皆それぞれの立場から朝鮮学校への思い、無償化除外に対する思いを話しました。
●先ず最初証言台に立った玄理事長は、原告側の主尋問を通して民族教育の歴史や朝鮮高級学校の創立目的、教育内容などについて質問に答え、朝鮮高級学校が韓国・朝鮮にルーツを持つ在日の生徒たちにとって民族的アイデンティティーの涵養になくてはならない尊い存在であることを訴えました。そして創立目的でもあり朝鮮学校共通の教育理念でもある「日本社会や世界で活躍できる有能な人材の育成」に触れながら日本の公式大会で優れた成績を収めている朝高の課外活動成果や現在、様々な分野で活躍している卒業生たちを紹介しました。彼らの姿を通して、朝鮮高級学校が地域社会の公益にも資する大事な存在であると訴えながら「すべての意志ある高校生が安心して学べる社会をつくるため」とする高校無償化制度の目的に照らし、差別なく朝高にも制度が適用されることを強く願い主尋問を終えました。この日、唯一の反対尋問は理事長に集中しました。被告側弁護団は理事長に対し、朝鮮学校と朝鮮民主主義人民共和国との関係、総聯組織との関係についてのみ集中的に尋問しました。ありもしない「不当な支配」関係をことさらに強調し、あたかも朝鮮学校の教育内容が総聯組織によって反日的なものに強制されているかのような印象を抱かせようとする質問に対しても理事長がひとつひとつ真摯に答え、一人目の尋問は終わりました。
●次に、当時の大阪朝高で日本語の授業を担当していた元教員が証言台に上りました。証人は朝鮮高級学校の教育内容が日本の公教育に何ら遜色のない立派なものであると同時に、民族的アイデンティティーを育む優れた内容であることを自身の経験から理路整然と語りました。そして生徒たちは日本の高校生たちとまったく変わらず学び、育っていると朝高の実像について語りました。そして、そんな学校生活の中で触れた「無償化除外」の報が、自身と生徒たちの胸にどれ程大きな傷を負わせたかを話しました。本来ならば将来の夢に向かって、受験勉強やクラブ活動など自分のために時間を使っていいはずの17才、18才の生徒たちが、なぜ幾度となく街頭に立ち、署名活動をしなければならないのか。「高校無償化」という画期的な制度の理念とはうらはらに差別され踏みにじられた生徒たちの思いについて証人は嗚咽をこらえながら話しました。尋問の最後に元教員は「高校無償化除外という差別が生徒たちから奪っていったのは単なるお金ではない。」、そして「若い彼らに生涯消えることのない心の傷を負わせた」と強く訴え尋問を終えました。
●三番目の証人は当時の生徒でした。生徒会長を務めた証人は、大阪朝鮮高級学校での学生生活が自分に揺るぎない民族的アイデンティティーを植え付けてくれ、それが確固たる自信となり日本社会の中でも堂々と生きて行ける力を与えてくれたと証言しました。そして三年間、ついに高校無償化が適用されなかった自分よりも「同じ思いを後輩たちにはさせたくない」との一心で、東京の大学へ進学後も毎週文科省の前に立ち「高校無償化適用を求める要請行動」を行っていると誇らしく語りました。最後に証人は、自分を人間として、朝鮮人として成長させてくれた朝鮮学校が否定されたことが納得できないとしながら、偏見を持たず、自分の目で朝鮮学校と自分たち生徒の姿を見て公正に判断して欲しいと裁判官に訴えました。
●最後の証人尋問は、田中宏名誉教授でした。日本とアジアの関係史を研究している田中教授は専門家の立場から「高校無償化制度」からの朝鮮学校除外が、いかに「場当たり的」で「政治的意図」による政権与党主導の差別政策であるかを解説しました。
様々な国の様々な文化を持つ教育に対して補助を行おうとする制度適用の審査基準に於いて「教育の同等性」を諮る場合、例外なく授業時間数などの「外形的要素」に主眼が置かれます。「教育の自由」と自主性を重んじる教育基本法の理念からも当然のことです。高校無償化制度も同様で、インターナショナルスクールや中華学校、韓国学校など多様な外国人学校が実施している教育の内容に関係なく対象として網羅されています。にも関わらず、朝鮮半島の政治情勢や日朝関係の停滞など政治的、外交的理由から朝鮮学校のみを制度除外するために様々な「企て」が「後付け」で行われました。それら「行政手続き違反」の根拠や瑕疵について田中教授は時系列に沿って、つまびらかに説明しました。まさに朝鮮学校のみが制度から除外された矛盾の理由が疑義を差し挟む余地のない整合性を持って解き明かされました。田中教授は最後に、裁判官に向かって「日本も批准している国際人権規約の観点からも、朝鮮学校の無償化適用問題は、単なる定住外国人の人権問題などではなく、韓国・朝鮮に対して『過去の植民地支配』という歴史的責任を負った日本の名誉に関わる問題」だと語り、公正な判断が切に望まれると尋問を締めくくりました。
■理事長の尋問後、被告代理人による反対尋問はありませんでした。裁判長は次回期日を来年2月15日(水)と定め、最終意見陳述を行うと告げました。いよいよ次回期日、当裁判は結審し判決へと向かいます。