昨年末の12月26日、文部科学省で高校授業料無償化の制度設計に携わった前川喜平・前文科事務次官が時事通信社との取材で、「高校無償化」制度の対象から朝鮮高級学校を除外した国の対応を「乱暴で理不尽極まる」と批判し、司法が是正すべきだとの考えを示しました。前川前次官は同法が施行された2010年の夏、東京、神奈川、茨城、愛知、大阪、神戸、京都、広島、九州の朝高生代表たちの訪問を受け、同法適用を求め全国で集められた11万7722筆もの署名を受け取りました。前川前次官はその際、「学びの権利を奪うことは、人権侵害であり差別」だと訴えた生徒らの切実な心情を聞き「『無償化』問題が浮上した後、数校の朝鮮学校を訪問したが、生徒たちはまじめに勉強していた」としながら、「適用可否がはっきりしない状態が続き、生徒たちを不安な気持ちにさせて申し訳ないと思っている。生徒たちの力でこんなに多くの署名を集めたことを評価したい。日本人にも理解が広がっているということは良いこと。生徒たちの気持ちと署名は、必ず文科大臣に伝える」と話しました。それから7年後、国の制度差別と司法の場で闘ってきた朝鮮学園の呼びかけに応じて前川氏は原告側から陳述書を出してくれました。その中で前川氏は、「規定ハ」の削除が文科省内でかねてからの懸案事項であったと主張した国側の陳述を真っ向から否定し、「高校無償化法制定当時、文部科学省内には朝鮮学校を対象として指定しないとする議論は存在せず、指定対象になるということは関係者の共通認識であった」と明確に示しました。
2018年1月7日付、共同通信の記事は以下のように綴っています。

 無償化の是非をめぐって卒業生や学校運営法人による訴訟が起こされており、2017年は広島、東京両地裁で原告敗訴、大阪地裁では勝訴の判決が出た。今年4月には名古屋地裁で判決が予定されているほか、福岡地裁小倉支部や東京、大阪、広島の各高裁でも年内に判断が示される可能性があり、再び注目が集まりそうだ。
安倍政権発足後の13年2月、国は朝鮮学校生を制度の対象から除外した。世帯年収で一定額未満となる家庭の生徒はその額に応じた国からの就学支援金を授業料に充当できる制度だが、「朝鮮学校が北朝鮮や朝鮮総連の影響下にあり、支援金が授業料に充てられない懸念がある」と見なした。
前川氏は「対象に含める前提で、朝鮮学校から申請を受け付け、審査もしていた」と経緯を説明。「支援金が授業料に充てられないと言うなら、その挙証責任は国にある」と述べた上で、「支給すれば授業料に充てたかどうかは直ちに分かることだ」と指摘した。
また、北朝鮮による拉致問題などと関連付けて除外を正当化することに対して「拉致は許されない犯罪行為だが、朝鮮学校生と北朝鮮の支配者層は別だ。差別や偏見をあおっている」と強調。「生徒たちは日本社会で育ち、日本の文化になじむ普通の若者だ。北朝鮮を理想の国だなんて誰も思っていない」と話し、共生の必要性を訴えた。
「人の心は弱く、誰かを差別したいという気持ちは皆が持っている」と前川氏。「今の政権は差別感情をあおって増幅させ、権力を維持している。そういうネガティブな感情を制御するすべを身に付けさせるのが本来の教育だが、できていなかった」と教育行政に関わった過去を振り返り、じくじたる思いを吐露した。

昨年末、氏が福岡と大阪の「無償化」裁判において原告側から陳述書を提出して以来、政府は躍起になって内容に反論しています。ですが、事の経緯と事実関係を最もよく知る「当事者」からの告発を否定することは決してできません。新たな段階に差し掛かった法廷闘争を闘う我々に、前川氏は揺るぎない根拠と確信をもたらしてくれました。